鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『裏庭(梨木香歩・著)』

2007-12-25 21:11:54 | Weblog
聖夜なんだけど、Live疲れで・・・。足がだるい。
聖夜なんで、ファンタジーを一冊・・・(特に、クリスマスって関係ないのですが・・・)。
ファンタジーというカテゴリーでいいのかな・・・。

この本は、実は、何度も読み返している。

レストランを経営する両親との希薄な関係で、いつも孤独な照美。
照美を深く深く傷つけた双子の弟・純の死。
町に昔からあるバーンズ邸の裏庭(異界)は、その傷を自覚すれば、きっと精神迄壊れてしまうほど大きな傷をもつ照美をテルミィ(tell me)に変え、異界とへ誘う・・・。
そこで出会う庭番(スナッフ・・・ムーミンのスナフキンみたいな風貌の男性・・・実は・・・???)。
この世界は、かつて平和と繁栄にみちていたけれど、世界を統治していた幻の王女が根の国に、行ってしまってから、崩壊のカウントダウンが始まっている・・・。
自分のもといた世界へ戻るため、照美とスナッフは、幻の女王のいるクォーツアスを目指し冒険の旅に出かける。

この物語は、対極(あるいは対立)する二つ世界が、いくつもいくつもリンクしている。
まず、照美と純(軽い知恵遅れという障害をもつが天使のような少年)という男女の双子。
現在と過去(第二次世界大戦前後)。バーンズ邸の姉妹・レイチェルとレベッカ。日本とイギリス。生と死。照美と母親の幸江。幸江とその母親・妙。レベッカと婚約者のマーチン。
そして、異界にすむコロウプとよばれる両性具有の不思議な双子と、双子としてうまれなかった単身の生贄たち・・・。

物語の終盤で、照美は、自分の傷の深さを知り、そして、傷を傷として自覚して、もとの世界へ帰っていく。

梨木さんの作品は、残酷だけれど、とてつもなく優しい。
スタートは児童文学ということだけれど、大人が読んでも充分・・・いや、それ以上に楽しめる。
私は、この作品にかぎったことではないのだけれど、梨木さんの著作を読むと涙が出てしまうことだってある・・・。

傷を恐れるな、傷に支配されるな、傷を自覚して育てていかねばならん・・・異界の力ある巫(かんなぎ)達は、照美に告げる・・・。

自覚すら出来ない傷が、血を流している・・・。

心が壊れそうになったとき、読んで下さい。