鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『死ねばいいのに:京極夏彦・著』~生成された謎の行方

2010-05-18 21:02:27 | Weblog
お天気・・・そろそろ変わり目か・・・。


本ばかり読んでいる・・・。
会社なんぞ行かなくていいくらいの資産があるなら、引きこもって本ばかり読む生活がしたいものである・・・と希望的観測を述べてみた・・・。

さて、京極堂さん最新作。
・・・いつも後悔するのだけれど、どうしてこう一気に読んじゃうのかなぁ・・・。
もっと、もっと、ゆっくりと、楽しみながら読みたい・・・と思いつつ・・・先が知りたい・・・と心は逸る。
ああ・・・こんなに良い季節なのに、こんなに焦ってどうするの・・・???

・・・という訳で、約4時間・・・休憩を含め、読了。
はぁ・・・。

人の心を弄ぶような筆致。

何が一番、怖いかって・・・???
人の心だよ・・・・。
・・・なんて、声が聞こえてきそう・・・。

或る女性(鹿島亜佐美・アサミ)の殺人事件をめぐり、被害者の関係者に、生前の被害者のことを聞きまわる不思議な青年・渡来健也(ワタライケンヤ)。

『死ねばいいのに』
と言われて、心に潜む闇を突き破られうろたえる関係者達。
みなさん、とても不幸なのだ。
不幸をみんな外的要因に見出そうとする関係者達。
自分を正当化しつつも、その壁は、ケンヤによって脆くも崩されていく。
このあたり・・・不愉快な話なのに、何故だか、一瞬、爽やかな風が吹くような気がしている。

このカンジ・・・何処かで・・・と思ったのだけれど、京極堂さんの著書の『巷説百物語』の主人公・御行の又市さんっぽい。
彼が現代に蘇ったら、ケンヤのようなイメージになるのでは・・・。

『・・・つっうか・・・。俺、あんまりちゃんと育ってねぇから、口の利き方とか知らないし。何怒ってんすか・・・。・・・ンなもん・・・・云々。』
ケンヤの語ることばは、こんなカンジで、現代の若者のしゃべりことばのようだけれど、活字になるとなんだか不思議なカンジがする。
そんな得体の知れないケンヤに、大人たちは、翻弄される。

ケンヤが生成した謎を、たぶん、誰も、解くことができない・・・。

そこは、深くて暗い闇の領域・・・。

『――死ねばいいのに。』