鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『伯林蝋人形館:皆川博子・著』~美しさと退廃に揺られて・・・~

2010-05-13 21:01:57 | Weblog
朝から快晴。


連休は、ひたすら読書。まさに読書三昧・・・ああ・・・極楽!夜明けまで読書。
その分、昼間寝てたけど・・・。
やはり、昼夜が逆転か・・・。会社の仕事が辛い・・・。

・・・で、本日は、 『伯林蝋人形館(ベルリンろうにんぎょうかん)』
幻想と現実と美と醜と・・・。
皆川先生お得意の湿性感と退廃と幻想と美しさ・・・そんな物語である。

アントゥール・フォン・フェルナウ・・・この物語の主軸となる登場人物ですが、元プロイセン貴族で仕官だったこの美青年。
皆川先生は、美青年の描写がとてもお上手だ。
美しい・・・退廃的な・・・破滅的な美青年・・・。
青年というよりは、青年なんだけれど、少年というか・・・。

この美青年を軸に、この青年と相似形の詩人・ヨハン・アイスラーの登場によって、物語は、複雑な退廃と美しさの度合いを深めて行く・・・。

・・・1920年台のドイツで・・・。
第一次世界大戦敗退後の荒廃したドイツに台頭するヒトラーの影。

この物語、最初は、読む人を迷路に迷い込ませるように、錯綜した関係を見せ始めるのだけれど。

どれが、現実で、どれがマヤカシなのか・・・。
自分を見失って行くような不思議な感覚を体験する。

追うもの、追われるもの、求めるもの、求められるもの・・・そして、美の対極にありながら、完全な美を所有するツェツィリエによって完成されるある実験。
ラストでは、交錯したはずの糸が、解きほぐされて、
ああ・・・そうだったのか・・・と・・・。

あらすじを書くことが非常に、難しい物語なので、ご興味を持たれた方は、ご一読を・・・。

でも、くれぐれも迷って、物語の中で、迷子になりませんよう・・・。

リアルとフィクションの狭間を、存分に楽しめる不思議な一冊。