鼎子堂(Teishi-Do)

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『マリアの涙:ピーター・シャビエル・著』

2011-03-08 22:40:27 | Weblog
晴れたり曇ったり・・・寒かったり・・・。


聖母マリア・・・清らかで美しく穢れなく・・・そんなイメージが2000年以上、彼女(・・・ってことでいいでしょうか?)を表す代名詞になっていて、マリア信仰の要となっているのは、ご存知の通り。
絵画や彫刻でも、マリア様は、若くて美しい・・・。

そんなマリア様を、著者のピーター・シャビエルさんは、人間としての『マリア』として、あぶりだして行く・・・っていうのは、前作『イエスの涙』での手法と同じですが、今回の作品では、才能溢れる彫刻家の自殺の謎、涙を流す聖母像、マリアの出現、ルルドの奇蹟、神学生くずれの作曲家・高津真理夫の苦悩、聖母マリア像によって苦悩を背負うことになった谷川美香子、恋人に自殺された花山エリカ・・・と、盛りだくさんなエンターティメントなんだけれど、古い?キリスト教の教義を覆す・・・生身のマリアの苦悩を、静かに見守るような筆致で描かれているようです。


高校生のとき、崩壊の進む家庭の中、雪の教会の前で、マリアと邂逅する藤原道生。
マリアを求めて、彫刻家・画家の道を目指し、渾身のピエタ像を完成させるも、その美しいマリアの顔を何者かに破壊され、オリジナルのマリア像の発表の日に謎の自殺。

『マリア』と『イエス』の関係を、現代に復元するかのような作曲家の高津真理夫の出生。

・・・私は、穢れなき聖母ではなく、ひとりの人間で、神の子である息子のイエスの死を虚栄と盲目のために、早めてしまった・・・。
十字架の下で、泣くしかなかった私・・・。
・・・それなのに、人々は、私を聖母と呼ぶ・・・私も罪ある人間のひとりです・・・

マリアは、そう叫び続けたけれども、誰も聞こうとしない・・・。
本当に、一部の心あるひとだけにしか、届かない・・・。
何故、私の苦悩をひとは、理解してくれないのだろうか・・・と・・・。

マリアの導きで、邂逅する4人の男女。
藤原道生の死を軸に、マリアの思いを辿りながら・・・、戸籍上の父とは、遺伝的に他人の高津真理夫は、マリアの預言どおり、音楽を通して、マリアに生涯を捧げていくのでしょう・・・。

全編を通して、透明感溢れる世界が展開してゆきます。
この作者さんの持つ軽やかな透明感・・・。

もし、自分にマリア様が出現し、預言してくれたなら、人は、どんなにラクな道を歩くことができるだろう・・・そんなことを考えながら、読了しました。


拙・ブログ『イエスの涙』)で、コメントいただいた『シュン』さま。出版情報どうもありがとうございました。
一気に読ませていただきました。