氷点下・・・マイナス5℃・・・寒さ底なし・・・。
底なしの寒さだけれど、自己発熱暖房(要するに蒲団の中)により、寒さを凌ぎつつ、年末年始番組の録画などを見ている。
映画『のぼうの城』を視聴して、はい・・・それじゃ、原作読んでみますかね?
掴みどころのない主人公(・・・だと思われる)・のぼう様こと、成田長知親。
真正の馬鹿なのか、或いは、底なしの将器の持ち主なのか・・・。
その辺は、一切、読者には、わからない。
煙幕でまかれたような印象の・・・主人公不在の小説・・・なのだが、この『不在』が、実は、存在の証明であるという・・・摩訶不思議な読後感なのだ。
不要の要だとか・・・。
のぼう様は、そういう存在だ。
無くてはならぬのに、無い・・・。
この小説は、のぼう様が、間違いなく主人公なのだが・・・と書いていて、ふと思った。
・・・のぼう様が、主人公なのではなくて、もしかすると・・・忍城・・・こちらがメインなのか・・・?
いいや、そんなハズもない・・・たしかに、浮城・・・湖に浮かぶ城らしいけれど。
何をしたのだか、さっぱりわからぬまま、のぼう様が、解決してしまう・・・その詳細は、一切明らかではない。
開城と決めたのに、いきなり取りやめて、『戦いまする』と言ってみたり、『悪人になる』といって、敵方の射程距離で、田楽踊りを踊ってみたり・・・。
のぼう様に勝算は、あったのだろうか・・・。
緻密に計算された結果の策略ではなく、ひとの情に訴える術を、天性に持ち合わせた人物と記されているのぼう様。
この『のぼう様』・・・自分の心情は、自分からなにひとつ明らかにせぬまま、物語は、終わる。
のぼう様の心が、わからぬまま(不在)であるからこそ、この不思議なのぼう様のミョウチクリンな魅力が、全編を取り巻く煙幕となり、のぼう様を過去のひとから、身近なひとへの存在へと変わる。
この得体の知れないのぼう様と対照的に家臣の正木丹波、柴崎和泉、酒巻靭負の個性的で、魅力的なキャラクターが光る。のぼう様・・・の、ますますの不在感。
気の毒なのは、石田三成であろうか・・・さんざんコケにされた揚句、城攻めに失敗。あんなに努力したのにね。
・・・読者としては、一度、のぼう様の本音を聞いてみたい気がする。