西条市のお祭りは想像以上に壮大だった。それにしても、伊予の人々は本当に祭りが好きだ。この祭りは西条市の西側から東へと2日間ずつ移っていく。最後は隣の新居浜市の大太鼓祭りだと聞いた。10月10日から始まって、17日で終わるようだけれど、この間の1週間はほとんど毎日がお祭りで、そのため工場は休業すると聞いた。何しろ地元の人々は次々と祭りに入ってしまうので、操業を続けることが出来ないのだ。学校も西の方から順繰りに休校となるし、どこかで食事をと思ってもお店は皆閉店しているらしい。
私たちが着いた15日は丁度、西条の駅前で何台かのだんじりが揃って気勢を上げていた。男たちは順番にだんじりを動かして上下に揺さぶる。どうもそれで町内の結束力を誇示しているようだ。周りには中学生と思われる女の子や小学生の低学年の男の子がついて廻っている。さらにもっと小さな子どもたちもいる。皆それぞれに、だんじりの組の法被やらTシャツやらを着ている。まだ、ヨチヨチ歩きの子どもでもそんな揃いの格好をして、ワッショイ、ワッショイとやっているが、実際はそんな掛け声ではなかったように思う。
だんじりとは山車のことで、屋台でもある。神様の降臨を祝ってか願ってか、引き回し、神様に喜んでもらうための祭りのようだ。山車は天に向かってそびえるように高くなっているのは、神様は高いところに降りられると考えたからのようだ。そういえば全国どこでも山車は背が高い。そして出来る限りの装飾を施して華やかさを際立たせている。西条市のだんじりは現在77台あるそうだが、その多くは木彫り彫刻で、中にはこれに色付けをしたものもある。どうやら色付けしたものの方がお金が高いらしい。
だんじり1台に2千万円かかるとタクシーの運転手さんは教えてくれた。では、祭りにつぎ込むお金はどのくらいになるのだろう。食事にお酒に衣装に宿に、その他いろんなものを合わせ、1台のだんじりに100人近くが関わっているようで、それが77台もあるのだから、相当な費用になるはずだ。それをいっきに使ってしまうのだから、祭りは気持ちがいいのだ。西条市のだんじりの数は増えているそうだ。子どもたちは学校で「俺んちのだんじりが最高だ」と自慢するので、だんじりのなかった町内もお金を集めて持つようになったらしい。
祭りを垣間見て、私は子どもの頃を思い出した。春は赤い布で覆った山車が市原神社に揃い、夏は万灯を担いだ荒っぽい祭りが秋葉神社で、秋には別の神社で若者が馬を追う祭りが行なわれた。春は農耕の初めを、夏は雨乞いを、秋は収穫を祝うものだった。祭りの時は無礼講で、男たちは酒を飲み、女たちも押し寿司や煮物を食べておしゃべりしていた。祭りの太鼓が響くとなんとなく気持ちが昂ぶった。おそらく地域の団結とか結束力がいっきに高まる時だったのだろう。
西条市の人々は、少なくとも2晩はほとんど眠らずに、だんじりを引き回すそうだ。それぞれの地域の神社に奉納する神事だからこそ許されるのだろう。その神社のお祭りを西側から順番に行なうと一体誰が決めたのだろう。さて、祭りのことはもう少し続けたい。何しろ姉の憧れの秋川雅史さんのことや地元の人とのふれあいもいっぱいあったから。