「もしもし、東京の田村ですけど」と若い男の声で電話がかかってきた。私の名前を言うので、「そうですが、何でしょうか?」と聞くと、同じマンションに住む人の名前を言い、「お金を貸しているのに、いくら電話をかけても出てくれません。呼んで来てくれませんか」と言う。そんな失礼な電話のかけ方はない。「あのね、私はあなたに何の義理もありません。どうしてそんなことが出来ますか」と言うと、「(借りた人が)何かあったら、あなたに電話して欲しいと言うからかけているのです。お金を返してくれないので困っているのです。緊急を要しているのです」と畳み掛けるように言う。
「田村さんは何歳なんですか?」と聞くと、「そんなことは関係ないじゃーないですか。早く呼んで来てくださいよ」と口調が強くなる。「人にものを頼む時にそんな言い方はないですよ。あなたとその人はどういう関係なんですか?」とさらに質問すると、「金を貸しているのです。早く呼んで来てください」と繰り返す。「あなたは東京のどこの方なんですか?」と聞けば、「そんなことはどうでもいいじゃーないですか」と開き直る。「そういうわけにはいかないでしょう。どこの誰が、何のために、いくら貸したと説明する必要があるでしょう。あなたは非通知でかけてきていますが、電話番号は何番ですか?」と聞いてみる。
「呼んで来るのですか、来ないのですか。来ないなら、あなたが払ってくださいよ」と脅すように言う。「あのね、もう一度言うけど、私はあなたに何の義理もありません。それにどこのどういう方かも分からない、電話番号も言わない、そんな人のことを信用出来ますか」と答えると、「金を返してくれるまで何度も電話しますよ」とまた、開き直る。バカタレか、こんな失礼な電話でハイハイと動く人がどこにいる。お金を貸したことが事実なら、もっと丁寧にお涙ちょうだい調でかけて来い。
これは下調べというヤツなのかも知れない。相手が独り者なのか、男なのか女なのか、年寄りなのか、話しやすいか乗ってきそうか、そういう調査のための電話なのだろうか。どこへでもいつでもつながるのは便利だけれど、それだけにこういう犯罪に結びつきそうなこともある。電話を切ったが、それから何度もかけてくる。精神的に追い詰めようとする手口だ。お金のある人や優しい人はだから騙されてしまう。録音はしたけれど、今度は逆探知器を備えておこう。