今から48年前、1冊のクラス誌が生まれた。その1年前に私は高校の教員となり、2年目の4月にこのクラスの担任となった。1年生の初々しさよりも高校生らしさが勝る頼もしい生徒たちだった。クラス誌は色褪せていて読みづらくなっていたので、先回のクラス会の時に、今は印刷の仕事にかかわっている当時のルーム長に、「何とか読めるようにできないか?」と相談した。それが完成し、メールで送られてきた。
読んでみると当時のことが思い浮かんでくる。クラスの重大ニュースには、2)体育祭祝辞反対-教育の場に政治をもちこむな!売名行為反対!ついに祝辞は一人も(文字が読めない)…バンザイ。3)弁論大会7人中5人出場-学校内の三無主義をけっとばせ!。4)文化祭堂々出場-1年生で出場はわがクラスきり。5)クラス学芸会開催-先生の企画で学芸会が開催された。ユニークでフレッシュな劇の数々。堂々3時間、たっぷり皆を楽しませてくれた。6)遅刻者1日最高18人!とある。
重大ニュースの1)は私の結婚で、「最後に格言を2つ。結婚は鳥籠のようなものである。外にいる鳥たちはいたずらに入ろうとするし、中の鳥たちはいたずらに出ようともがく(モンテーニュ)。温順無類の夫は狂暴無類の妻をつくる(狸諺)」とあった。今、思うと「先見の明」を持っていたんだと感心するが、そう書いてくれた人も今は、格言に感銘していることだろう。
イラストも多く、なかなか面白く出来上がっているが、残念なことは色褪せて文字が読めない部分があることだ。これより後の時代なら、原稿をFAXで読み取って印刷できたのに、この時はガリ版印刷だったから、原稿を集めてガリ切りをする「編集者」は大変だっただろう。編集後記を見ると、「なんだかわたし1人がわめいていたような感じだった。みんなの中から、やろうという気持ちがもりあがってきて、みんなしてやらなければ意味がない―Y・K」とか、「オレはガンバッタつもりだけれど、女上位時代の典型女子で、あれやれこれやれ、全くいきぐるしかったでゴリス―M・G」とある。
2017年度デジタル版を作成してくれた彼も編集後記に「バカみたいだったなあ。本当に悲しくてやりきれないよ全く。いやいやだったなあ。何のためにオレ達はやったんだろう。そして何をえたのだ?そしてダレが喜んだんだ?そしてダレが苦しんだんだ?―T・F」と書いている。15歳か16歳、教室でギターを弾いてフォークソングを歌っていたあの頃が思い出される。