友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

せっかくのお父さんの遺品なのに

2022年09月09日 17時58分58秒 | Weblog

 我が家の和室に、額で飾られた服部担風さんの書が掲げてある。カミさんのお父さんが担風さんから頂いたものだ。カミさんのお父さんは風流人で盆栽や、退職してからは庭に窯を造って陶芸を楽しんでいた。個展を開くほど、作品は人気があった。

 お父さんは子どもの頃、教師になりたかったが、家の都合で呉服屋に丁稚に出された。しかし結核にかかり、実家に帰された。警察官にならないかと言われてなったが、戦争が激しくなり30過ぎていたのに徴収された。戦地に行く前に終戦を迎え、警察に復帰した。

 警察の世界は学歴が高くなければ出世は出来ない。それならと地域務めを願い出て、その土地に馴染んでいった。弥富で書家の担風さんに出会い、常滑で陶芸家のもとに通った。書の腕もたいしたもので、退職してから務めた高校の事務では卒業証書の名前書きを任されていた。

 お父さんが亡くなって遺品として頂いてきた担風さんの書は、92歳の時に書かれたものだと分かるが、肝心の文字が読めない、意味が分からない。書道家の知人に読み方と意味を教えてもらった。

 彼女は、「『鶴性松心』で、鶴のように高くのびのび飛ぶ様と松の樹の姿を同じように観て重ねた4文字じゃないかと思います」と教えてくれた。和室に入る度に額を見上げ、思案してきた難題が解けてなぜか安堵した。

 担風さんについては中日新聞に昔、故郷の人を紹介する囲み記事に掲載されていた。あの時、切り抜いておけばよかったと悔やむ。担風さんは96歳で亡くなられた長寿の方で、若い頃に漢詩を学ばれたとあったと記憶している。

 せっかくのお父さんの遺品なのに、今になってやっと理解する情けない婿でごめんなさい。今更遅いけど、もっとお父さんの話が聞きたかったです。


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