森田朗氏の『左翼商売』を読みましたが、今日の空のようなスカッとした気分にはなれません。独断と偏見と罵声に満ちていて、全く論理的でないからです。この本の目的は、「はじめに」にあるように、「左に沈みそうな日本を少しでもバランスの取れた国にしたくて」書かれたものです。
日本沈没の原因は「左翼思想」にあり、「左翼が人々を騙し続けた」ので、「日本は悲しいくらいダメな国になりました」。「新型コロナでは世界最低の対応しかできませんでした。これは保守を自称する自民党にまで左翼の毒が入った証拠です」というが、「左翼思想」とは何かがよく分かりません。
「日本では新聞、政治家、言論人はもちろん、大学教員の職に就き学者を自称する人達さえ、無教養なのか陰謀なのかは知りませんが『左翼』と『リベラル』を混同した発言をしています」と指摘。「経済発展を重視するのが右、経済発展だけでは貧しい生活から脱却できない人が出るから彼らを助けようと主張するが左」で、リベラルな勢力と説く。
共産主義国家は成立過程で、その後もたくさんの市民を虐殺してきた事実を上げ、ソ連が崩壊し中国は共産党独裁で市民に自由がない、にも拘わらず共産主義・社会主義を捨てきれないのが左翼思想という。新左翼はなぜスターリン体制が生まれたのかを原点に出発したが、対立する党派を暴力的に潰そうとしたり、連合赤軍事件まで生まれ、左翼思想の見直しを余儀なくされてきた。
森田氏の主張の中にも共鳴できる部分はある。漢文や古文を必須科目で行う必要があるのかと私も思う。大学入試のあり方も変えていく必要がある。入試に合格すると、勉強しないし学問に精を出さない大学生は確かにおかしい。どういう社会にすべきか、みんなで議論していくことが大切だろう。
そのためには、レッテル貼りを止め、議論が進むように論理を展開べきだろう。それが出来なければ我が国は何も変わらないと思う。