昨日の県民福井が、「ラムサール条約に登録されている敦賀市樫曲(かしまがり)の「中池見湿地」を北陸新幹線延伸ルートのトンネルが横切るとして、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が工事の影響を回避、低減するための対策を盛り込む「環境管理計画」を作成することが分かった。国内初の事例で、多様な動植物を育む湿地の適切な開発の指標となる。」と報道しています。
新幹線トンネルの着工時期が変更されます。完成時期は変わらない、としています。
中池見湿地保全は敦賀市の住民のみなさんが粘り強く保全を求め、ラムサール条約に登録された経緯があります。
新幹線トンネル工事で湿地が破壊されかねない、と全国の環境保護団体も反対声明をだし、ルートが変更されました。それでも、湿地に影響を与えるのではないか、一度こわされたら元には戻らない、との懸念の声がつづいています。
■県民福井 11月3日 敦賀・中池見湿地 環境計画で影響低減
北陸新幹線の延伸ルートが水源の山を通る計画の中池見湿地=敦賀市樫曲で
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鉄道機構 生態系考慮し建設
ラムサール条約に登録されている敦賀市樫曲(かしまがり)の「中池見湿地」を北陸新幹線延伸ルートのトンネルが横切るとして、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が工事の影響を回避、低減するための対策を盛り込む「環境管理計画」を作成することが分かった。国内初の事例で、多様な動植物を育む湿地の適切な開発の指標となる。 (米田怜央)
環境管理計画は二〇〇八年のラムサール条約締結国会議の決議で提唱され、作成時には決議の中にあるガイドラインの活用を促している。中池見湿地で建設が予定されているトンネルは、湿地帯東側にある水源の山を南北に通る七百六十八メートル。約四百メートルが登録範囲にかかる。
関係者によると、機構は昨年十一月、外部の専門家による「北陸新幹線、中池見湿地付近モニタリング調査等フォローアップ委員会」をつくり、今年七月、建設するトンネルの工法や工事後の水環境の調査方法などをまとめた原案を提示。委員からは、調査地点の増加や計画作成後の着工を求める意見が出た。着工までの委員会開催はあと一回あり、機構は詳細を詰めている。
中部大の村上哲生教授(陸水学)は「工事で湿地に流れる水の量や質が変わると、生態系に影響を及ぼす恐れもある。根拠のある計画を作り、先行事例にするべきだ」と指摘している。
機構は今年に入って着工時期を当初の九月末から来年七月に延期。理由については「地元や関係機関との協議の結果」とし、計画作成との関係を否定している。一九年度末までとした工期は変更していない。
機構は一五年、当初ルートの一部を湿地帯から離れるように変更。それでも登録範囲内をトンネルが通り、日本自然保護協会や湿地を管理するNPO法人など七団体が環境管理計画の作成を求めていた。
中池見湿地 絶滅の恐れのあるデンジソウなど2000種以上の動植物が見られ、2012年7月に湿地(25ヘクタール)と周辺の森林計87ヘクタールがラムサール条約に登録された。地下40メートルほどにわたって堆積した泥炭層には、世界でも珍しい約10万年分の気候変動の記録が残るという。
ラムサール条約 国際的に重要な湿地の保全などを目的に1971年に国際会議で採択された。国内では80年の北海道・釧路湿原が登録第1号。現在は三方五湖や愛知県の藤前干潟など50カ所が登録されている。