物部の森

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【書籍】私塾のすすめ -ここから創造が生まれる

2008年09月13日 | Weblog
 『私塾のすすめ -ここから創造が生まれる』(齋藤孝・梅田望夫著、ちくま新書)を読む。

 全編両者の対談形式で進んでいく。齋藤氏は、「シンプルに基本を繰り返し叩き込みながら万人の底上げをはかる」という教育方針。一方梅田氏は、「やる気があって目を輝かせている“上の人”を伸ばしていくことに興味がある。」若干の志向性の差はあるが、両者共通して持つ思いは「私塾願望」である。

 昨年末、かつての新人研修の教え子たちの自主勉強会の講師(この言い方は好きではないが)をした。もともと彼らの同期何人かとプライベートで飲んでいて、「自主勉強会をやりたいので講師をやってほしい。」みたいな話になった。私もその場のノリで、「10人くらい集まるんやったらやってもええで。」と社交辞令的に軽く答えたところ、20人近くの有志が出席することになった。特段決まったカリキュラムがあるわけでなく、午後半日4~5時間という枠の中で何を教えるのか、あるいは何を考えてもらうのか、結構悩んだ。
 結局、「40歳の先輩社員から、4年目の“そろそろ若手という言い方がそぐわない年恰好の社員”に対してのメッセージ」を基本テーマとし、カリキュラムを組み立て、本番に臨んだのだが、皆まじめに取り組んでくれた。
 この話を同僚にした時に、「それはお前の『私塾』みたいなもんやで。」と言われたことがある。もちろん自分ではそんな高邁な言葉で表現されるようなシロモノではないと思っている。ただ、それまでは彼らに対する教育メニューは、多少のカスタマイズをするものの、基本は人事制度上定められたものを施していたのが、本“自主”勉強会は、ゼロから完全オリジナルでメニューを作成した。そして当日は、講師として言葉を発しながら、改めて(あ~、実は俺はこういうことを考えていたんやな。)と何か自分自身に向かって講義をしているような感覚にとらわれた。要するに自分の言葉を反芻しながら自らも学習しているのである。また同時に、教え子たちのディスカッションや発表を聞きながら、今の若者たちの考え方や価値感が学び取れ、非常に良い経験だった。

 人間、基本的には「新しいことを知ったら楽しい」という『学習欲』と、「何か人に教えることによって気分良くなれる」という『教育欲』を持ち合わせている。また教え手自身が教えるという行為を通じて学び手になっていたり、あるテーマでは教え手と学び手の関係だったのが、別のテーマでは立場が逆転するということもある。世代にせよ、立場にせよ、価値観にせよ、互いに少しでも差があれば、「学び」のベクトルが生じる。不特定多数の人のそんなベクトルをランダムに結節させていけばすごい知のパワーが生み出されるのではないか(梅田氏はホームページやブログを用いることにより、サイバー空間で私塾的なものが展開できると述べていた)。
 それぞれの「思い」が基点となり、やりとりしながら相互に啓発される、つまり教え手も学び手も対等に学習できている、という空間が理想の『私塾』なのではないかと思う。


コメント
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