Mちゃん3歳。
歯並びがとってもいい女の子です。
でも、虫歯がひとつ・・・!
松見歯科での子供たちの虫歯治療は、本人が虫さんをやっつけてくださいと「覚悟」を決めるまでは手をだしません。
子供たちは、はじめ怖さが勝って、泣いたり喚いたり、ぐずったりとお母さんや大人たちを困らせます。多くの歯医者さんは、あの手この手を使い騙し騙し、なだめすかして治療をするのですが、当院では、子供がどんなに抵抗しても「知らん顔」します。もちろん、お母さんにも協力体制をとっていただき手出し、口出しをいたしません。
院長「虫さんをやっつけてくださいって、先生の所に言いにきたら、やっつけてあげます」「泣く子はやっつけられません」
歯科衛生士「ずっと、椅子に座ってるん?」「早よ、先生にやっつけてもらおう!」「Mちゃん、もうお姉さん帰るよ~」
Mちゃん「
・・・・。うわ~ん
」
久しぶりに、手ごわい頑固者(笑)Mちゃん。どうしても虫歯を削るのが怖くて嫌です。4時間ほど粘り、ついに診療室は誰もいなくなり、Mちゃんひとり。
新米衛生士は、院長の方針を恨めしく思い断腸の思い。こんなスパルタでいいのかしら?と反感すら感じているようです
。
お母さんと一緒に診療室、裏の無何有庵に来てよく遊んでいるMちゃんは、院長先生が裏にいることはわかっていますから、決心がついたら一人で来ることができます。院長、衛生士、私、平静を保ちながらも内心落ち着きません。Mちゃんの泣き声が診療室中轟いています。
代わる代わる、そっと気が付かれないように覘きにいきますが、これは腰をすえての長期戦となりそう・・・。
私や衛生士は女性です。やっぱり手出ししそうになる母性を持っています。
しかし、この虫歯治療には邪魔!って院長に叱られます。父性が大切なのかもしれません。
虫歯を作る過程で、母子関係がお姫様と召使状態になっていることが多いです。
知らず知らず、言うことを聞かせるために変わりに何かを与え、子供は、何かをもらわないと言うことを聞かないでもいいという学習をしているのです。
Mちゃんも3人姉妹の末っ子でカワイイカワイイと大切に育てられ、お母さんも「一番甘やかしていたんです~」と納得。
お母さんは、既に家に帰って診療室はMちゃん一人。
さあ、Mちゃんどうするか・・・。
ひっくひっく泣きながら、裏にやってきます。
Mちゃん「む、虫・・ひっく・・さん・・ひっく・・」
院長「Mちゃん、何言よるんか、先生わかりません」
Mちゃん「ひっく、ひっく、む、ひっく、ひっく、虫・・・ひっく」
院長「泣いてもいけません」「泣かんでちゃんと先生にお願いしてくれんと先生は虫さんやっつけません」
Mちゃん「・・・・うわ~ん
」
私、歯科衛生士「・・・・・・・
」
こんなやり取りをしてまた1時間。
さあ、運命の決断です。
Mちゃん「うううう・・・、虫さん・・うう・・やっつけて・・うう・・くだ・・ください!」
よっしゃ~!!!!
という訳で無事治療が終了。
この勝ち誇ったうれしい顔
なだめ空かして治療をすると、本人の虫歯をつくったという問題が薄れ、言うことを聞いてやっているという逆転の立場になります。そうすると、虫歯と戦った達成感や頑張った気持ちが生まれません。これは、虫歯再発へのアプローチとなるのです。
一見、むごい、きつ過ぎる~って感じる、院長の方針ですが、決していじめているわけではありません。こうなると、衛生士も胸をなでおろしながらも、大きく納得。院長の方針を確信します。
Mちゃんをお家まで送っていくと、おかあさんやお兄ちゃんおねえちゃんが玄関まで駆け寄ってきました。Mちゃんの顔は、ちょっとお姉さんになっていたのです。
お父さん、お母さんの言うことがちゃんと聞けるように、少し成長した誇らしげな顔になっていました。
後日、Mちゃんは虫さんと自分から戦うことが出来たので、表彰されたのは言うまでもありません。おめでとう~!よく頑張ったね
もう、虫歯なんかつくらないぞって、決心したMちゃんでした。