2017年3月28日
「働き方改革実行計画」の決定について(コメント)
社会民主党党首 吉田 忠智
本日、安倍政権が目玉政策とする「働き方改革」に関して、政府の働き方改革実現会議は、長時間労働の是正などに向けた「働き方改革実行計画」を決定しました。労働側が求めてきた課題についての前進面もありますが、ワーク・ライフ・バランス(生活と仕事の調和)やディーセント・ワーク(人間らしい尊厳ある労働)を実現するには、まだまだ程遠いといわざるをえません。
時間外労働に罰則付きの上限規制を設定することになり、青天井の残業時間に、初めて法的な強制力がある歯止めがかけられることは、大きな前進といえます。また、時間外労働の限度基準の適用除外業務である自動車の運転業務や建設事業も今後規制の対象とする方向性が打ち出されたことも評価できます。しかし、繁忙期の上限を「月100時間」未満とすることには、たとえ繁忙期であっても、労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する残業にお墨付きを与えるものであり、過労死された方の遺族からも強い批判が出されています。時間外労働の上限規制は、あくまでも「これ以上働かせてはならない」というものであり、「ここまで働かせてもよい」というものであってはなりません。また、「名ばかり管理職」や、無理やり裁量労働制を適用するような抜け道や、時間外労働の総量規制の「年720時間」の上限に休日労働を上乗せして、年に960時間まで働かせられるすることも可能となるという抜け道も指摘されています。いかに規制の実効性を確保していくのかが重要です。
非正社員の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」についての方向性が示されていますが、ILOが提唱する原則からはまだまだ十分とはいえません。雇用形態や男女間の差別を正当化したり、成果主義に収斂し、正規雇用の賃下げ、中高年層の人件費削減、家族的責任のある労働者の置き去りにつながったりしないよう、実効性のある均等待遇原則の法制化に向けた努力が求められます。「インターバル制度」についても、企業への努力義務を課すにとどまっていますが、法律によって、罰則付きの義務化を検討すべきです。
さて、安倍首相は自ら、「『働き方改革』は、第三の矢、構造改革の柱となる改革」であると位置づけています。労働者保護ルールの緩和につながる、「世界で一番企業が活動しやすい国」のための「働き方改革」になりはしないかということが懸念されます。実際、すでに国会に提出されている労働基準法改正案については、「早期成立を図る」とされています。「働く人の視点に立った働き方改革」というのであれば、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入や企画業務型裁量労働制の見直しは撤回すべきです。
「働き方改革実行計画」及び今後の法案化・制度化作業について、労働者の命と健康を守り、ワーク・ライフ・バランスとディーセント・ワークの視点で、より実効性のある「改革」の実現に向け、厳しく点検していくことが求められています。社民党は、労働者のための真の「働き方改革」を実現すべく、現場の皆さんとともに全力をあげます。
以上