3,林業行政について
【中川】コロナ禍でのウッドショックにより輸入材が値上がりし、建築材が手に入りにくくなっています。県産材の活用のチャンスなのですが、伐採、製材、建築というそれぞれに課題があり、おいそれとはいかないようです。
この間、いくつかの関係団体の調査を行ってきました。森林組合では、木材を切り出す仕事が安定的にあるわけではなく、冬季の除雪作業や他の森林組合の仕事をしているとのことです。県産材を専門にしている製材所では、「輸入材が手に入らず県産材をといわれるが、再び輸入材が入ってきたら、輸入材に戻るということではやってられない。今後とも県産材を扱ってくれる工務店と付き合いたい」と言われていました。一方で、工務店では「施主の意向で少しでも安く建築をしようと思ったら、安い外材を使わざるを得ない。県産材と言っても普段取引していないので扱いにくい」と言われています。
また、県産材85%を使用し残りも国産材にこだわって建築をしてきた業者は、「信州の木で家をつくりたい」と、木材業者や製材所と連携して県産材による住宅建築をしているとのことです。そこで、林務部長にお聞きします。
(1)県産材の利活用について
【中川】今回補正予算で、県産材製品利用促進緊急対策事業が提案されていますが、森林県から林業県へというスローガンがスローガン倒れにならないように、ウッドショック後においても、恒常的に県産材が利活用される仕組みをどのように構築していくのでしょうか。お考えをお聞かせください。
【林務部長】恒常的な県産材の利活用の仕組みについてでございます。
現在、外国産の木材の高騰により、県産材の需要が高まっています。林業県を目指す本県としては、こうした状況が沈静化した後も、長期的で確かな需要に繋がる仕組みの構築が必要と考えております。
具体的には、外材から県産材の利用にシフトする建築事業者等と、供給側である林業・木材産業のマッチング機会を創出するとともに、今まで県産材が使われなかった、店舗や公共建築物などの非住宅分野への需要拡大を図ってまいります。
加えて、県産材の供給面においては、林業における主伐・再造林への転換を通じた丸太の安定供給や、価格競争力のある県産材製品を供給するための加工施設の整備等への支援を進めてまいります。
(2)今後の山の作業のあり方について
【中川】昨年の7月豪雨や今年の8月豪雨で、松枯れ対策などで皆伐された山で、これまでにない雨量により、雨が山にしみ込まず山の表面を一気に流れ、下流部の畑などを侵食したり、土砂災害を引き起こしています。これからは想定外の雨量を見越した山の作業のあり方を指導していくべきではないでしょうか。
【林務部長】次に、想定外の雨量を見越した山の作業のあり方についてでございます。
県では、松くい虫対策において、「松くい虫被害対策としてのアカマツ林施業指針」を定め、事業体等に指導しておりますが、皆伐を実施する場合は、アカマツ以外の樹種をできる限り残すこと、必要に応じて排水等の防災施設を設置することなどを新たに追加をし、災害防止に努めてまいります。
山の施業のあり方については、平成27年3月に作成をした「皆伐施業後の更新の手引き」に基づいて、山地災害履歴のある箇所や山地災害危険地区が存在する流域では、皆伐施業を避けることなどを、林業事業体等に指導してきており、引き続き、研修会等を通じて災害の発生を防ぐ施業の徹底を図ってまいります。
(3)林地への太陽光発電施設設置について
【中川】同様なケースとして、皆伐して太陽光発電施設を建設することにより、土砂災害の原因となる恐れがあります。太陽光発電のための林地開発に対してどのような基準で許可されているのでしょうか。林地開発申請は1haを超える開発が対象となっていますが、例えば1haを超えないように別々に申請が行われた場合はどうなるのか、林地と農地を合わせて1haを超える場合への対応など課題があるように思います。林地への太陽光発電施設建設に関する現状と課題、対策についてお伺いします。また、伐採届は市町村に出されるので、これまで以上に市町村との連携を強化すべきではないでしょうか。
【林務部長】太陽光発電施設建設に関する、林地開発許可制度の現状と課題、対策についてでございます。
1ヘクタールを超える森林を開発する場合は、森林法に基づく林地開発許可制度として、土砂災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全という4つの観点から厳正・慎重に審査し、基準を満たす場合には県が許可をしております。
これに加えて、太陽光発電施設に関しては残地森林と自然斜面への防災施設の設置などの基準を、令和2年度から追加して審査をしております。
太陽光発電施設では、同じ地域で1ヘクタール以下の開発が複数個所で行われる場合もあることから、実施の時期、開発行為の共同性、集水区域等を確認し、開発行為が一体と認められる場合は、関係する事業者に対して林地開発の申請を行うよう指導をしております。
許可制度の対象とならない1ヘクタール以下の小規模な開発では、災害が発生する頻度は低いものの、防災対策等を考慮することが必要と考えております。
このため、今後も市町村に提出された伐採届の写しの提供を求め、必要に応じて地域振興局の林務課職員が、市町村に対してきめ細やかな技術的な助言等を行うなど、市町村や関係機関との連携を密にしてまいりたいと考えております。
【中川】森林の開発によってこれまで言われてきた森林の持つ多面的機能が失われない取り組みをお願いいたします。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます