5,パラダイムシフトについて
【中川】産業界は利益を出すことを目的として経済活動が行われていることは当たり前の話ですが、県が関わる産業政策は県民の幸せをつくるためのものでなければならないと思います。利益を出すことが第一義的であるがゆえにCO2排出について産業界は自律的に取り組むことが難しく、国や県の政策として展開をしている状況があります。
同様に、人口減少対策についても、ゆとりのある職場環境をつくってこなかったゆえに生じている課題の一つで、この間、国の音頭で働き方改革が進められてきました。
産業界にとってCO2の排出削減にしても、働き方改革にしても、コストがかかる話であるので、政治が平等にコスト負担を求めなければ公正な競争を阻害してしまうからです。
働く人の賃金は、労働力の再生産費です。再生産費の中には、明日また元気に働くことのできる再生産費も含まれていますが、次の世代をつくる再生産費も含まれています。ところが人口減少が続くということは、次の世代をつくることができない賃金の水準であると言えます。
また、夜間・深夜労働が多いことも働く人の健康を害しやすくなるなど、次の世代をつくるための労働条件となっていないと言えます。「寛容」な社会を目指しパラダイムシフトするためには、働く皆さんの賃金・労働条件の改善が不可欠であり、そのためには産業界の協力なしに進まないと考えますが知事の所見をお伺いします。
【知事】「信州未来競争戦略」の中には、「働き方・暮らし方の当たり前を見直そう」ということが記載されているわけであります。これまでどおりの働き方あるいは私たちの日常の暮らしの当たり前、こうしたものを前提としているだけでは、なかなか人口減少下の社会には向き合えない、あるいは乗り越えることは難しくなってきているというふうに考えています。
例えば、若い人の賃金、これまで相対的に抑制されてきているわけでありますが、こうしたことだと、なかなか「子どもをもとう・結婚しよう」というモチベーションにつながらない状況もありますし、また長時間労働ということが当たり前となっていれば、なかなかワークライフバランスといったことにも取り組めませんし、「男性・女性みんなで家事を分担しましょう」というようなことも円滑に進まないという形になります。そういうことを考えると、これまでの当たり前・常識、こうしたことをしっかりと変えていかなければいけない、まさにパラダイムチェンジをしていかなくてはいけないと考えておりますし、その中でご指摘いただいたような賃金の問題あるいは労働条件の改善、極めて重要なテーマだというふうに受け止めております。こうしたことを改善していくためには、我々行政だけではできません。まさに産業界の皆様とも問題意識を共有して、一緒になって行動する、そして各企業にも主体的に行動していただくということが大変重要だと思っております。県としても、先ほども長野県政労使会議の話をしましたが、そういう場を通じて私どもの考えをお伝えしていきたいと思いますし、また一方で「未来のNAGANO創造県民会議」を設置しております。産業界の皆様方にも加わっていただいておりますので、そういう意味では問題意識を共有して同じ方向を向いて、パラダイムチェンジに挑戦をしていきたいというふうに考えております。
【中川】県庁職場において、難病患者や障がい者が共に働けるインクルーシブな職場にしていくことや、精神疾患などで休職したり退職することがないような職場にしていくことが求められています。
まず隗より始めよという古語を持ち出すまでもなく、県庁職場が「寛容」であることが、県民の幸せをつくっていく道であることを最後にお訴え申し上げ質問を終わります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます