2,中学校部活動の地域移行について
(1)中学校部活動の成果と異議
【中川】次に、中学校部活動の地域移行について教育長に4点お伺いします。
中学校の部活動の地域移行の目的の一つは、教員の負担を減らすことだと思いますが、そもそも、これまで残業代も出さずに働かせてきたことが問題であったのではないかと思います。しかし、その中にあっても子どもたちに真摯に向き合い、子どもたちの成長と教師自身の成長があったと感じます。
これまでの中学校部活動が果たしてきた、子どもたちにとっての意義や成果、部活動を指導する教員にとっての意義や成果と言えることは何だったのでしょうか伺います。
【教育長】子どもと教員にとって部活動の意義や成果についてのお尋ねでございます。
まず、子どもたちにとっての部活動の意義や成果について私自身が見てきた1人の生徒の成長の姿から述べさせていただきたいと思います。
入学当初、運動が苦手で自己表現に乏しく、プレーに自信を持てなかったAさんは部活動に入部後、先輩や仲間の応援を励みに、日々の厳しい練習に取り組んでまいりました。そして迎えた3年生最後の夏、自信いっぱいに堂々とプレーをし、最後の試合に敗れた後、清々しい汗と涙にまみれながら、支えてくれた仲間や家族に感謝の言葉を述べる姿に、思わず私も胸が熱くなった記憶がございます。
成功や達成、失敗や挫折、信頼と感謝など子どもたちは部活動から得た様々な経験を通して人間的に大きく成長する。ここにこそ、生徒にとっての部活動の意義や成果があるのだと思います。また、教員にとっての意義や成果については、私自身がこれまで多くの生徒と部活動を通して、共に同じ夢を見、共に笑い、共に涙してきましたが、こうした生徒たちと、今なお交流を続けており、当時を振り返りながら、一人の大人となった生徒たちの成長を大変微笑ましく、また心強く感じるところございます。
生徒との人間関係がより強く結ばれ、共に成長してきたことを実感できる部活動は、教科指導では味わえない満足感や充実感、達成感があり、ここにこそ、教員にとっての部活動の意義や成果があると考えております。
(2)地域の受け入れ基盤の整備について
【中川】部活動の地域移行の目的の一つについて、地域と共に子どもたちを育てるということですが、地域の受け入れ基盤が未整備のまま移行することはできません。指導者の確保について、街頭活動など行われているようですが、特に平日の指導者の確保は厳しい状況があると思われます。また練習場所は、優先的に学校施設を貸してもらえるのかなどの課題があると思いますが受け入れ基盤の整備についてお伺いします。
【教育長】平日の指導者確保につきましては現在、信州地域クラブ活動指導者リストへの登録を募集しており、2月5日現在で251名に登録いただいておりますが、8割が土曜日・日曜日の指導を可とする一方、平日については5割程度となっております。
こうした状況から、今後、平日の地域移行を進めていくためには、さらに多くの方々のご支援ご協力が必要と考えており、引き続き指導者の確保に向け広く周知募集等の取り組みを進めてまいります。
また、地域クラブ活動の活動場所については、現在、国の実行会議において、学校施設の優先利用や使用料減免等のルール作りについて検討されており、県教育委員会としましては、こうした国の動向を注視しつつ、市町村教育委員会と連携し、活動基盤の整備に努めるとともに、県立高等学校施設の使用許可についても研究するなど、受け入れ基盤の充実に向けた仕組み作りを検討してまいりたいと考えております。
(3)学校部活動の良い面をどう残していくのか
【中川】部活動の地域移行は何をおいても子どもたちのためでなければならないと思います。これまでに、部活動の地域移行について子どもたちの意見は聞いたのでしょうか。学校部活動の中では、「選手としてがんばりたい」という子どももいれば、「友達と仲良く遊びたい」という子どももいます。また、発達に特性のある子どもも学校部活動では受け入れることができました。学校部活動は、クラスだけの友達関係から、部活動を通じた友達関係に広がると同時に、競技としてのスポーツの底辺を拡大する意味合いもあったと思います。地域移行によって、こうした学校部活動の良い面をどう残していくのかお伺いします。
【教育長】子どもからの意見聴取については、県教育委員会では令和5年の6月、小学校5、6年生と中学生を対象に地域クラブ活動への期待や不安などを問うアンケートを実施し、寄せられた8375件の回答を踏まえ、県のガイドラインを作成したところでございます。
今年度内には改めて小中学生、保護者、教職員を対象したアンケートを実施する予定であり、引き続き主役である子どもたちの意見を尊重しながら、より良いスポーツ文化芸術環境の整備に取り組んでまいります。
また、議員ご指摘のとおり、学校部活動は競技力の向上や生涯スポーツの推進にとどまらず、人間形成や社会性の向上、自己肯定感の醸成等、子どもたちの成長を支える上で重要な役割を果たしてきたと認識をしております。
地域クラブ活動においては、こうした部活動の教育的意義を継承するとともに、活動のフィールドが学校単一から地域社会に広がることで、この枠や世代の違い、障がいの有無等の枠を超えたスポーツ文化芸術活動の交流が可能となり、インクルージョンの推進に資する新たな価値の創出が期待できると考えております。
今年度、実証事業に取り組む市町村の中には、実際に小学生や特別支援学校の生徒、地域の方々等々、幅広い交流を目的に、多様な子どもたちを包み込む地域クラブ活動に取り組む事例が報告されており、県教育委員会といたしましてはこういった好事例を広く県内に広めてまいりたいと考えております。
(4)中体連大会について
【中川】松本市と長野市が先行して平日の地域移行もすすめようとしています。平日学校部活動にも参加し、休日地域クラブにも参加している子どもは、学校部活動か地域クラブかどちらから中体連の大会に出場するのでしょうか、また部活動を行っている中学校が少なくなる中で中体連の大会運営はどうするのでしょうか、種目によっては中体連の大会に参加するために地域クラブの指導者が有料で新たな資格をとらなければならないなど課題があります。県教委としてどのように受け止めているかお伺いします。
【教育長】部活動の地域移行が進み、中体連大会に参加する地域クラブが増加する中、部活動または、地域クラブのどちらから大会に参加するかについては、活動の趣旨から、生徒自身の自由な意思に委ねられることになると認識をしております。
また、中体連の大会運営については、これまで公立中学校の教員が中心となってまいりましたが、地域クラブからの参加が増えていく中、大会の運営方法をはじめ、中体連組織のあり方や費用負担の仕組みなどを見直す必要があると考えております。
このため、本年度より県中体連が立ち上げた検討会議に県教育委員会も参画し、将来に向けた体制整備の検討を始めたところでございますが、今後は、私立中学校の教員や地域クラブの指導者、競技団体等、大会に関わる関係者との協働する仕組みを構築していく必要があると考えているところでございます。
さらに、指導者の資格取得については、知事部局において「信州地域クラブ活動指導者リスト」の登録者を対象に、スポーツ指導者資格の取得に係る経費の補助を予算計上しており、地域移行の取り組みを一層推進できるよう、引き続き知事部局と連携しながら取り組んでまいる所存でございます。
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