1,多文化共生施策の推進について
10月に本県議会に選出され、ベトナム・カンボジアへ視察に行き、11月議会中に報告もさせていただきましたが、円安で日本へ働きに来るメリットが薄れる中にあっても、ベトナムは日本において高度人材の育成を期待しています。カンボジアは、農業人材などを育成し戻ってきて母国のために働いてほしいと願っていることを聞いてきました。
わが国は、様々な職場で人材不足となっていますが、単に労働力が不足しているからという理由だけで、外国人人材の活用を捉えていては、結果として日本は選ばれなくなります。韓国においては、韓国に行ってから韓国語を教え各県に母国語による生活相談を行う機関があるそうです。日本語教育や生活相談などの充実はまったなしの課題だといえます。
加えて、育成就労制度になれば転籍が可能となることから、長野県が、外国人から働く場所として選ばれるような施策が求められます。
県は新年度において、「信州で暮らそうオンライン日本語教室」を新たに始めるほか、「(仮称)長野県外国人政策検討会議」を設置して、外国人政策のあり方や現行制度上の課題などについて議論を行うこととしています。
そこで、そうした議論をすすめるにあたっての課題を提起したいと思います。最初に、県民文化部長に4点お伺いします。
(1)外国人生活相談窓口について
【中川】昨年10月「外国人生活相談、自治体の負担増 交付金申請額が国予算超過」ということが報道されました。長野県内には、外国人生活相談窓口を設置している自治体はいくつあるのでしょうか。また、「外国人受入環境整備交付金」が当初予定していた通り交付されなかった自治体があると聞きますが現状と対応についてお伺いします。
【県民文化部長】外国人生活相談窓口の設置状況および外国人受入環境整備交付金についてのお尋ねでございます。
外国人生活相談窓口の設置状況については、県の調査では令和6年4月時点で県を含む県内22の自治体で、母語相談員や通訳者を配置した相談窓口が設置されております。
次に、外国人受入環境整備交付金のお尋ねについてでございます。本交付金は、外国人からの生活相談を一元的に担う相談窓口の設置運営に必要な相談員の人件費や事務的経費の一部に交付金を活用できるもので、県内では、県を含む10の自治体に交付されております。
令和6年度におきましては、全国の自治体からの申請件数が想定を上回ったことなどから、国の予算不足が発生し、国から自治体への内示額が要望額を下回ります、いわゆる内示割れが発生いたしました。昨年10月の県の調査によりますと、県を含む9の自治体で内示割れとなっております。
内示割れの対応でございますが、県では、国への要望額に対する121万7000円の不足につきまして、事務経費の削減等で対応しており、市町村においても、当初計画からの変更を余儀なくされたものと承知しております。
県のみならず、市町村にとりましても、内示割れの影響は大きいことから、県では全国知事会におけます春と秋の2回の要望の他、他県とも共同で2回、合計4回にわたり必要な予算を確保するよう国への要望を行ってきたところでございます。
今後も国の動向を注視しつつ、引き続き国への要望を行い、相談窓口が安定して運営できるよう努めてまいります。
(2)地域日本語教育について
【中川】日本語教育推進のため、文部科学省は『「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業』において、日本語教育を実施していない自治体等を対象にスタートアッププログラムとして日本語教室の設置に向けた助成を実施していますが、現在、県内でこの助成を受けているのはわずか1自治体であり、空白地域の解消につながっていません。
また、一つの自治体が日本語教育を一生懸命やっていると、そこに外国人は集まって来るので、他の自治体はその自治体任せになってしまい、日本語教育を行っている自治体の負担感は強いことから、今後は広域での日本語教育の推進が必要であると考えます。
加えて、地域日本語教室は多くがボランティア主体で運営されており、日本語教師の有資格者が不足していることや、日本語教室など多文化共生事業の立ち上げ方が分からない自治体もあることなど課題は沢山あります。。
そのような中、県では、文部科学省の助成を受け、「長野県地域日本語教育の体制づくり事業」に取り組み、地域における日本語教育に関する相談対応や助言等を行う「地域日本語教育コーディネーター」を県下4地域に各1名配置するなどして対応していますが、県土の広い長野県全体をカバーするにはさらに増員が必要と考えます。
また、県は来年度から新たにオンラインでの日本語教育を行うということですが、外国人にとって日本語教室は仲間と会うことができる交流の場にもなっており、対面での日本語教室を増やすことも必要であると考えます。
そこで、県の地域日本語教育の取組に係るこれまでの成果と課題は何か、また、今後、外国人への日本語教育をどのように進めていくのか伺います。
【県民文化部長】これまで県では、令和2年3月に策定いたしました長野県多文化共生推進指針2020に基づき、コーディネーター、日本語教師および日本語交流員の三者が連携した人材連携型教室の普及および人材養成を重点的に進めてまいりました。
その主な成果といたしましては、これまで6市において人材連携型教室が開設されたこと、外国人学習者の会話相手などの役割を担う日本語交流員を286名養成し、人材連携型教室などで活用を図ることができたことなどが挙げられます。
一方、主な課題といたしましては、特に小規模町村においては、日本語教育の専門人材やノウハウの不足等から、単独での教室設置が難しいこと、人材を確保することの難しさから、人材連携型教室の普及が伸び悩んでいることなどがあると認識をしております。
こうした課題を踏まえ、今後県といたしましては、来年度から外国人県民が県内のどこに住んでいても日本語などを学ぶことができる教室をオンラインで開設するとともに、外国人が集中している自治体などにターゲットを絞り、人材連携型教室の普及を進めてまいります。
さらに、外国人県民の増加を見据え、日本語教育における県市町村民間団体などの役割分担や諸課題の解決に向けて、来年度、有識者等で構成されます、長野県外国人政策検討会議(仮称)や部局横断で設置いたします長野県多文化共生推進本部(仮称)において検討を行ってまいります。
(3)災害時、外国人への支援について
【中川】能登半島地震で技能実習生などの外国人がどこに避難したらいいか分からなかったという報道番組がありました。日本では、どんな災害があるのか、どこに避難したらいいのか、どんなものを準備しておけばいいのか、救急車を呼ぶ方法など外国人のための防災訓練が必要と考えます。災害多言語支援センターを担う、災害時外国人支援情報コーディネーターの増員を含めて、災害時の外国人への支援についてどのように考えているか伺います。
【県民文化部長】続きまして、災害時の外国人の支援についてでございます。
県内に居住または観光で訪れます外国人の増加に伴い、外国人に対する災害時の情報提供や、被災者支援などの強化、災害に備える防災教育の推進は、多文化共生を進める上での重要課題の一つであると考えております。
これらに対する県の取り組みといたしましては、県総合防災訓練の際に、情報の多言語化や被災者支援に対応する災害多言語支援センターの設置運営訓練を実施いたしますとともに、外国人県民のための防災講座を開催し、防災知識や意識の向上を図っております。
また、総務省が平成30年度から実施しております、発災時に情報の発信元である行政と外国人被災者を繋ぐ専門人材である災害時外国人支援情報コーディネーターの養成研修を職員が継続的に受講し、発災時に円滑な対応ができる人材の確保に努めてきているところでございます。
このような取り組みに加え、昨年9月に策定いたしました長野県地震防災対策強化アクションプランに掲げました、災害時通訳翻訳ボランティア(仮称)の養成研修を来年度から新たに実施してまいります。
あわせて、危機管理部と連携して、外国人に対する効果的な防災教育の実施方法について検討いたしますとともに、県や市町村の職員へも広く、災害時外国人支援情報コーディネーター研修の受講を推奨するなどにより、外国人災害時の支援の強化に努めてまいります。
(4)人材養成について
【中川】今年度、出入国在留管理庁が外国人への専門的な支援をコーディネイトする「外国人支援コーディネーター」制度を作り、多文化共生の施策を進める人材の養成を行っています。長野県としてはどのように人材養成をしていくのか伺います。
【県民文化部長】現在県では、地域日本語教室で活躍していただく日本語教師および日本語交流員の養成講座の実施、行政と外国人県民のパイプ役となる地域共生コミュニケーターの登録制度を設け、行政機関や病院などへの同行などの活動支援、市町村の外国人相談窓口の相談員等を対象とした研修会の実施などに取り組み、多文化共生に係る人材の養成に努めております。
こうした中、人材養成の課題といたしましては、外国人が直面する問題は就学や医療福祉、教育など多岐にわたっており、人材の確保、専門性の向上が求められること、市町村単独で外国人からの相談や支援に対応する人材を育成することが難しいことなどがあると考えております。
このため、人材の養成について県、市町村、民間団体等の役割分担や課題の解決に向けて、先ほど申し上げました長野県外国人政策検討会議(仮称)および長野県多文化共生推進本部(仮称)におきまして検討を行い、多文化共生を進める人材の養成に取り組んでまいります。
(5)外国人労働者の受け入れ環境の向上について
【中川】次に、産業労働部長にお伺いします。外国人の就労受け入れ先として、賃金が低かったり労働条件が厳しく、日本人労働者が定着しにくい分野があり、こうした分野での人材確保のために外国人労働者を当てにすることは本末転倒であると思います。賃金・労働条件など外国人労働者の受け入れ環境の向上についての県の取組みを伺います。
【産業労働部長】県内の外国人労働者は、人手不足等を背景に増加しており、令和6年10月末現在で、平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高の27,834人となっております。
令和9年度までには、「育成就労制度」が導入され、県内においても長期にわたり地域・産業を支える人材としての活躍が期待されるところでございます。
このため、県では、外国人材受入企業サポートセンターや外国人材受入企業マッチング支援デスクでの相談対応やセミナー開催を通じて、外国人材との相互理解の重要性や、雇用・労務に関する注意点等、企業の受入れ環境向上のポイントについて丁寧に周知し、浸透を図っているところでございます。
また、外国人材の更なる活躍に向けては、賃金や労働条件の向上に加え、暮らしやすさの面でも「外国人に選ばれる県」になっていく必要があると考えております。
来年度設置予定の「長野県外国人政策会議(仮称)」及び「長野県多文化共生推進本部(仮称)」では、外国人も暮らしやすい社会の実現に向けた議論を予定しております。
今後より一層、産業界を含む関係機関とも連携を深めながら、外国人が「働きやすく」「暮らしやすい」地域社会となるよう取り組んでまいります。
(6)外国人児童生徒への教育の充実について
【中川】次に教育長にお伺いします。文部科学省が行っている「帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」を活用して、外国人児童生徒への教育の充実を図る必要があると考えますがいかがでしょうか。また、県教委に外国人児童生徒への教育について推進する担当者をおいてはいかがでしょうか。
【教育長】「帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業」につきましては、都道府県・指定都市・中核市が実施主体となって取り組む事業であり、令和6年度、長野県においては長野市と松本市が実施しております。
また、中核市以外の市町村については、県が実施主体となり、間接補助により実施するものであると承知をしているところでございます。
近年、外国人児童生徒は増加傾向にあり、小中学校においては、日本語指導教室を33校に設置するとともに、外国人児童生徒が多く在籍する小中学校13校に加配教員10名を配置し、学習指導及び支援を行っております。
また、高等学校においても、支援が必要な外国籍生徒や帰国生徒86名に対し、支援相談員30名を配置し、日本語指導や学校生活の支援を行っているところでございます。
今後、市町村と協議したり、高等学校のニーズを把握したりしながら、本事業の有効な活用も含めた支援の充実に努めてまいります。
また、推進する担当者につきましては、現在、担当課にそれぞれ担当者がおり、連携して推進しているところでございますが、対象児童生徒数が増加傾向にあることも踏まえ、担当者のあり方については今後検討をしていく所存でございます。
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