リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートという楽器 (1)

2005年01月16日 04時14分25秒 | 随想
 さてリュートという楽器について少し触れてみよう。リュートという楽器は残念ながらヨーロッパにおいてもそう認知度が高いとはいえず,空港の職員がケースを見てそれは何かとよく聞かれる。ケースの蓋を開けて,見せてもほとんどの職員はこれはどこの楽器なのかと聞く。それでこれはリュートだと言うと,合点をしたような表情をする。ヨーロッパではluteとかLauteということば自体はまだよく知られているのだ。日本では状況はさらにきびしくなり,ことばでリュートを弾いているといったら,管楽器のフルートと誤解される始末。実際の楽器を見せて説明してもどこの民族楽器であるかとたずねられるのがオチだ。リュートを始めた頃友人が「リュートを弾く人間は100万人にひとりだ」と言っていたが、これは今もそう変わらないのではないか。もちろんコンサートに足を運んでくれる方はこの何十倍もいるしCDを楽しんでいる方はもっといるだろう。とはいえ、数からいけばマイナーのクラシック音楽の中でマイナーな存在である古楽のさらにマイナーな楽器なのがリュートである。草笛のように元々どこの世界どの時代でもマイナーなものならいざ知らず(草笛の演奏家には失礼な言い方で申し訳ないが)、かつての栄光と現代ではこれほどまで知られていない事実とのギャップには忸怩たる思いがある。今の自分の腕でも他のもっと知られた楽器ならもう少しは儲かるものをなどと俗的な愚痴も多少は出ようもの。