リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

考察!

2005年01月21日 00時53分17秒 | 日記
Thomb outsideにしている話、以前に書いたと思いますが、まだ続けています。今までのポジションにもすぐ戻れるので、なんかもう技のデパートみたいな感じになってきました。thomb underの指先だけを使ったフィゲタも人差し指をのばしていくフィゲタもアームを使ったのも、ディディージョだって。もう何でもいけまっせ。(笑)
昔のリュート弾きの絵を見ていると、(特にバロックリュート)現代の奏者の誰もがしていない弾き方ばかりで、これはいったい何なんだろうとよく思います。全員thomb outsideでブリッジのすぐ近くのところを今のクラシックギター奏者のようなアームの位置で弾いています。でもそのように弾くと音がペンペンと鳴ってしまいます。でもなんとか妥協点を自分なりに見いだしてホピーのレッスンで弾いてみたら、やっぱりだめだと言われました。うーん、そうかー、そうだよなぁ。
奏法が違うのはいろいろなファクターが考えられますね。まず好みの問題、それから弦や楽器の問題。でも好みとかいった観念的なものではなく、これって結構即物的な問題って気がしているんですけどね、特に弦ですね。ガット弦を今のピッチ(415)で1コース3.5キロくらいで張るとプッツンプッツン切れて話になりません。これを現代の羊がひ弱だからって羊のせいによくされるんですが、なんかそうじゃない感じがしますねぇ。(羊さんよかったね)
私が考えているのは、今より低いピッチでもっと細い弦を張ることです。それこそニ短調調弦じゃなくてハ短調調弦。これは実は実験をして、以外と実用的だってことがわかっています。それとそういう緩く細く低目の弦にパワーをかけて響くしっかりした楽器。今の復元リュートって少し華奢で軽すぎる感じがするんですよね。もちろん博物館なんかに残されているリュートをよく研究して作られてきているんだけど、表面板などの木は経年変化をして薄く軽くなりますよね。これがひょっとして予想されているより薄く軽くなった割合が大きく、逆にいうと昔の楽器はもう少し厚めで重めの板で作られていた、かもしれないです。(もちろんそれでも現代のギターよりはずっと薄く軽いですけど)
要するに、より緩い弦とよりかっちりした楽器ですね。一見相容れない組み合わせですけど、ブリッジよりの位置でパワーをかけて弾いて大きな出すことができる。そしてそれは多分現代の嗜好にもマッチする。うーん、理論としては美しいなぁ。(笑)
このあたりの基本的アイデアは琵琶から来ているんですよ。琵琶って基本的にソリッドな胴体でしょ。箱を響かせる式じゃなくて。そういう楽器に弦をパワーをかけてひくと(もちろんすすりなくようなピアニシモも行けますけどね)驚くほどの大きな音がでますよね。リュートはソリッドじゃないけど本質的にそのような性質を持っていると思うわけです。まぁ、単に板を厚く重く作っただけでは、もちろん全然ならないですけどね。これだと70年代はじめの全然ならない楽器に逆戻りです。ではなくて、必要なところは薄く楽器としては少し重く腰のある音が出る楽器です。製作家さん、がんばってほしいですね。