リュートは中世にはすでによく使われていたようだが、黄金期を迎えるのは15世紀後半から16世紀である。特に16世紀に入ってからは、当時の最新技術であった印刷術でリュートの楽譜が大量に複製されるようになり、ヨーロッパ各国で大変な人気を呼んだ。そして単に人気だけではなく、現代の水準ではおよびもつかないような名人たちを多数輩出したのがこの時代だ。地域的にはイタリア、フランス、ドイツ、イギリス地域は言うに及ばず、ハンガリー、チェコ、ポーランド、スペイン、ポルトガルといった周辺地域にもおびただしい名人を生んだ。この時代 ―― 一般的にはルネサンス時代と言われているが―― リュートがもっともひろがりを持ち、楽器にとっても最も幸せな時代だっただろう。