リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートとの出会い (9)

2005年04月08日 00時26分49秒 | 随想
 1971年夏、私は自動車の運転免許証を取得すべく県の運転免許センターに通っていた。その当時は、学科試験と実技試験に通れば即免許交付という時代で、自動車学校に行かずに「一発合格」をねらっていたのだ。ただ現実は厳しく、そんなに都合よく1回で合格するわけがなかった。何回も何回も朝早く起きて再チャレンジしていたが、何回目かの朝、FMラジオでバロック音楽の時間という番組を聞きながら準備をしていら、担当の皆川達夫氏が、アルバムとしては世界で初録音というバロック・リュートのレコードを紹介していた。演奏は日本人の佐藤豊彦氏、曲はヴァイスのニ短調組曲。皆川氏の解説によると、楽器は昔のリュートを忠実に復元したもので弦もそれにふさわしい低張力のものを使っている由。その演奏を聴いたときはそれが新しい時代のバロック音楽表現の幕開けとさえ思ったものだ。佐藤氏のことは少し前から現代ギター誌を通じて知っていたが、彼の演奏を聴くのはその時がはじめてだった。その後、人を通じて彼とコンタクトを取るようになり、1976年には彼を訪ねてオランダのデン・ハーグに行くことになる。