リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートとの出会い (12)

2005年04月20日 04時40分17秒 | 随想
 夕食の前にロビーで他の参加者と話をしていたら、どうもリュートを弾く人が何人か来ているらしい。食事後その人たちを探してもらい会うことができた。リュート奏者は二人で、ひとりはNさんもう一人はSさんで、共に私と同世代の人たちだ。この講習会ではじめて目にするチェンバロやヴィオラ・ダ・ガンバなどの古楽器に圧倒され、今の自分では古楽にまだ参加することができないという焦りとか疎外感みたいなものを覚えていたものだが、リュートを弾く彼らに会って話をしているうちに、古楽の世界に入っていく入り口が見えたような感じがした。お二人にはそれぞれの楽器を見せてもらったが、リュートというものを自分の手に取って見るのはこのときがはじめてだった。特に興味をひいたのはSさん楽器で、スイスのヴェヴェイに住む、サンドロ・ツァネッティ作の楽器だという。それは驚くほど軽く作られ非常にゆるい弦が張られていた。歴史的な手法で作られたリュートは軽くできており、ゆるい弦が張られているということは知識としては知っていたが、これほどまでとは知らなかった。もっとも現在の楽器製作水準からすれば、その楽器はまだ発展途上と言うべきで、本来はもう少し重量があり弦もそれよりは少し強めのものを張るべきなのだが、当時としては古楽器復元製作の最先端を行く楽器ではあった。