リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートとの出会い (10)

2005年04月15日 22時58分00秒 | 随想
 1972年の3月頃、新聞の片隅にある小さな記事を見つけた。それには「失われたバッハの曲を再現する風変わりな講習会・・・」とある。詳しく読んでみると、バッハは4つの受難曲を書いたが、そのうち2曲は失われた。その2曲のうちのひとつ、マルコ受難曲に関してはバッハが他のカンタータにいくつか流用しているので、ある程度は再現が可能だ。本講習会で再現されたマルコ受難曲の何曲かを復元楽器で演奏し、歌ってみる・・・という大変刺激的な内容だ。早速書かれてあった住所に手紙を書いて要項を取り寄せた。要項は程なく届いたが、問題が一つあった。自分が参加すべきコースがないのだ。当時はギターしかひけず、受講するコースにはギターはなかった。はたと困ったが、ふと見ると講師の中に大橋敏成氏の名前があった。氏の名前はレコードの解説やいろんな雑誌の記事で目にしている。何かの記事で読んだことだが、氏はリュートにも関心が深いらしい。自分ができることとの接点はここしかないと思い、ヴィオラ・ダ・ガンバクラスを聴講することに決めた。一人で講習会に行くのは少し心細かったので、ギターを弾く友人のYをさそって参加した。