リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ロバート・バルト来る

2005年04月22日 04時50分20秒 | 日記
今日のクラッセンはロバート・バルトがドイツからやってきまして、「バロックリュートにおける右手に関する考察」と題して、お話と演奏を聴きました。彼は最近、右手のポジションを「サム・アウト」に変え、ブリッジよりで弾いています。これは去年の12月にレッスンに行ったときに知ったんですが、こっちの人はまだ誰もそのことを知らなかったようでした。「変貌した」彼の話を聞くのは今日が初めてとあって、みなさん興味津々。
彼の主張はこうです。昔のリュート奏者の絵を見ると、特に17世紀以降は全く例外なしに「サム・アウト」でブリッジ近くを弾いている。そのことはみんな承知しているが、だれもやらない。でも昔の奏者がそういう弾き方をしているのは必ず理由があるはずだというのです。サム・アウトはともかく、ブリッジ近くで弾くと音が硬くなりあまり美しくないのは彼も承知しているんですが、説得力を持つためには、楽器そのものの選定、低めのピッチ、そしてよく響くところで弾くということが必要になってくるそうです。ピッチは390くらいに下げているとのこと。あとガット弦を使うことも当然ファクターの中に入ってくると思うんですが、それはやらないとのこと。細いガット弦はよく切れますからねぇ。演奏しながら、説明をいろいろしてくれましたが、彼は気軽にいろいろ弾く人で、終わりの方では、結局ヴァイスの長いソナタをまるまる始めから終わりまで弾いてしまいました。

クラッセンが終わってから、ワインを飲みながら、クラッセンの二次会みたいなものが始まりました。話の中で、「サム・アウト」に変えるのにどのくらいかかったか、という質問には「1年くらい」と言っていました。また、新しいヴァイスのCD(第7集)の話しも出て、実は編集にミスがあって、間違っていたものが500枚くらい出てしまったそうな。今は正常なものが出荷されているそうですけど、その間違い編集されたCD、コレクターズ・アイテムですね。そのあと、持ってきた別の楽器を弾き合いっこしたり、なんやかんやでクラッセン本体を含めると延々3時間近くやってお開きになりました。