リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

日本語の音楽用語(3)

2020年02月14日 12時23分54秒 | 音楽系
日本語に訳してしまったがために事の本質を誤解してしまうような用語もあります。たとえば「弱起」。ドイツ語式ではアウフタクトといいます。音符がいくつか小節の前に出ている始まり方です。

これはヨーロッパ語の音韻構造に根ざしているもので、本質的に日本語にはないのでもっとも日本人が苦手とすることのひとつです。そもそも分かったと思い込んでいて、苦手という意識すらないかもしれません。

知り合いのスイス人のアマチュア奏者はアウフタクトをそれなりにできていました。同レベルの日本人アマチュアなら全くできないことです。それどころか日本人のプロと称する人たちでもこのアウフタクトがきちんと理解されてない演奏をすることがあります。

日本人によくありがちなのは、「弱起」の「弱」の文字があるため弱く弾いてしまうとか、それだけではまだ足りないので、スタッカートにしてみたりします。弱くひくことも短めにするのも実際にはあり得ることですが、いつも同じパターンで、これでは本質を理解しているとは言えません。本質は小節の頭の音に重みがはいることです。この「重み」というのも、「強い」というのは少し異なります。4拍子の曲のリズムを「強、弱、中強、弱」なんて学校で習いませんでしたか?これを実際に文字通りに演奏したら全く音楽になりません。「強」というのは「重さ」がかかるところなのです。