リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

かあさんの歌

2020年02月16日 22時31分05秒 | 音楽系
日本人に広く親しまれている歌のひとつに「かあさんの歌」があります。1956年頃に窪田聡という方が作詞・作曲した曲で、長野県長野市の田舎の情景をもとにした歌詞のようです。メロディもしみじみとした素朴な感じのするメロディです。「日本の歌百選(ホントは101曲)」にも選ばれています。

私は小学校の中学年くらいのころでしたか、確かNHKテレビのみんなの歌で聞いたのが初めてだったと記憶しています。実はこの歌についてその当時からひとつだけ気になっていることがあります。

それは歌詞に出てくる「せっせとあんだだよ」の「だだ」の部分です。私の小さい頃、アメリカの西部劇でよく黒人の召使いみたいな人が出て来て、「だんなさま、ご飯の用意が出来ましただ」なんて言い方よく聞きました。

この「あんだだよ」がまるで黒人の召使いが言っているようで、少し違和感みたいなものを覚えたものです。田舎の方言という感じがする言い方ですが、「かあさんの歌」の他の部分は3番の「もうすぐ春だで」という部分以外は方言的ないいまわしはありません。この曲の作者が情景を歌ったという長野市にはこういう方言があるのでしょうか。

実は「~しただ」とか「~だで」といういい方は名古屋とか三河の方言にあります。私は大学が名古屋で活動も名古屋とか愛知県東部を中心にしていたため、名古屋とか三河地方に何人か知り合いがいます。

例えば:

大学のときの同級生:「天気予報だとよー、明日は雨だで傘がいるなぁ」(さすがに「いるなも」とは言っていませんでした)

名古屋市内の楽器製作家:「ナカガワ君、今日はウチで飯食っていくだー」

西部劇の黒人召使いの「~しただ」は、映画の翻訳を担当した人が、黒人訛りの英語を日本語に訳す際に編み出したいい方だといいます。翻訳家がたまたま名古屋とか三河の出身で、「手軽に分かりやすく田舎っぽくなる」というので使ったのかも知れません。

「かあさんの歌」の作者がもし同じ手法を使って歌詞を書いたのだとするとちょっとがっかりはしますが、実際のところどうなんでしょう。