リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

世界初公開!

2021年04月01日 00時06分36秒 | ウソ系
ザザビーズというオークションで一枚の古楽譜が800万円で落札されました。楽譜と言っても五線譜ではなく、年代的には18世紀前半のものというくらいしか公表されていませんでした。ひょっとするとそれはバロック・リュートのタブの可能性が考えられました。

いつぞやのBWV998のときもそうでしたが(こちらは1億円で落札の噂があります)、リュート関連の楽譜がときおりオークションに出てくるものです。

落札者の名前は公表されていませんでしたが、どうも中国人らしいということで上海に住む知り合いの中国人にきいてみましたら、なんと彼の弟が落札したということでした。実はこの弟さん、私が1999年に上海でコンサートをしたときにいろいろお世話になった方で、そのころは一介のギターを愛好する勤め人だったのですが、ひょんなことで始めた不動産投資であれよあれよという間に財を築き、20年後の今や上海の浦東に巨大なビルを4つも持つ大富豪です。

まぁ旧知といえば旧知の仲ですので、連絡を取ってみると、

「ウェイ、ウォーシェーチュンチュワンシャンシー(もしもし、私は中川祥治です)」

「おー中川さんね。久しぶりあるね。どうしてる?」

「コロナで大変ですけど、また上海でコンサートをしたいですね。ところであなたが先日落札した楽譜ですけど、よかったら見せてもらいたいんですけど」

「あー、あれね。あれ多分琉特琴(リゥターチン)の文字譜あるね」

「(やっぱり!)」

「琉特琴は日本語だとリュートだたかな。巴赫のBWV998の1億に比べたらたった800万、安いもんあるね。つい衝動買いあるよ。ハハハ。なんなら中川さんにプレゼントするあるよ」

「いやいや、そんな高価なものとんでもない。画像を送ってもらうだけで十分です」

「おー、中国人なら絶対にもらうある。やっぱり、あなた日本人あるね。それじゃ中川さんが世界の皆さんに広めるある」

ということで楽譜を送ってもらいました。それがこちらです。世界初公開ですよ!



曲名はPhantasia、ファンタジアです。なんとイタリアンタブです。作曲者名は書かれていません。調弦はバロック・リュートのニ短調調弦ではなく、アーチ・リュートの楽譜のようです。公開の許可を頂いた記念に録音をしてみました。楽譜には少しミスがありますが私の方で修正いたしました。また楽譜はこのページだけですが、曲は途中で切れています。この続きも補作してみました。最近ヴァイスのコンチェルトのフルートパートを補作しましたし、こういうことは得意です。一度聴いてみてください。

Phantasia