リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

あともう少し弦をめぐる状況

2021年04月19日 07時37分44秒 | 音楽系
当ブログで何度も書いている通り、リュート用のガット弦に関してはまだ開発途上で、バス弦の性能および細い弦の耐久性においてはまだ満足できるものではありません。多分ヴァイスが使っていたであろう弦の性能にはまだ到達していないでしょう。ヴァイスが使っていたであろう弦の製作技術は100年も200年も蓄積されたものがあったはずですが、それが一旦完全に途絶えて復元が始まりました。その歴史は70年代初めの古楽復興期からまだ50年、本格的な復元だとせいぜい20何年程度というところでしょう。

現物が沢山残っていた楽器本体でも、満足できるレプリカ楽器が安定的に製作家が作れるようになるのに20年近くかかっています。弦に関しては昔の現物は素材の性質上残っていません。ゼロからの復元、わからないことだらけです。それが20年やそこらの時間で満足の行くものができると考えるほうが間違っています。ただ100年も200年も要するとは考えてはいませんが、もう少し時間はかかると思います。将来的には期待しています。

ということで「リュートは全てガット弦を張って弾くのがもっとも正統的だ」という主張は、本来はそうあるべきですが、現状を考えると素朴な、ある意味ロマンティックな、直球的なとらえ方であるということがお分かりかと思います。弦のセレクトはガット弦、合成樹脂弦を是々非々で選んでいきたいものです。

さてここまでのまとめとして、現時点での現実解として、お薦めパターンを書いておきましょう。


◎バス弦はアキラのCD弦、他はナイルガット、ナイロン、カーボンの合成樹脂弦。
これが一番お薦めです。

どうしてもガット弦を、という方は、毎日練習して細い弦は特にマメに交換するなどの心構えが必要です。そうでないと結果的に合成樹脂弦より音は悪くなります。何日も弾かず久しぶりにケースを開けてみたら1コースが切れていたというような人はそもそもガット弦向きではありません。

その上で:
◎バス弦はアキラのCD弦、残りの弦をガットにする。

あとはいい先生についてしっかりと練習し綺麗な音で音楽的に弾けるようにすることです。