リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

これで最後弦をめぐる状況

2021年04月25日 17時44分58秒 | 音楽系
弦を使う古楽器はリュートだけではありません。チェンバロ、ハープ、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバなども弦を使う楽器ですが、現代の古楽演奏においてどういう状況なのか見ていきましょう。

古楽復興期からバスのヴィオラ・ダ・ガンバはガットを使っていました。低音の楽器なので、1弦が切れやすいというような問題はなく今に至っています。ただ5弦以下の弦についてはどういう弦であるべきかの研究は必要だと思われます。

チェンバロについてはガット弦ではなく金属弦です。バロック音楽の時代の素材は現代のものより不純物が多く、それは音に影響します。現代の素材で作った弦を張った楽器と当時の素材を研究して同じような素材の弦を張った楽器とはかなり響きは異なると思います。私の知る限りではそういうことに関心のあるチェンバロ奏者はとても少ないです。

日鉄SGワイヤのHPによりますと、チェンバロは真鍮線と鉄線(強度は低いが加工性の高い、オスムンド鉄と呼ばれるスウェーデン製の極低炭素鋼)が使われていたようです。現代の鉄線は高炭素鋼(スチール)ですし真鍮線も成分が異なるでしょうから、リュートで言えば、ガット弦とナイロン弦くらいの音色差があるかも知れません。

ヴァイオリンに関しては、バロック・ヴァイオリンを弾いている人に弦のことを尋ねるとどこそこの会社の弦を使うと言うレベルの方が大半で、張力のことを考えてセレクト(メーカーのセット売りに頼らない)をしている人は今までにひとりしかお目にかかったことはありませんでした。私に言わせると4本しかないんだからもっと関心を持ってほしいですね。(笑)

ハープはモダンのグランドハープでもガットを使っているみたいですが、ナイルガットやカーボンも使っている人も多いようです。リュートより弦が多いですから背に腹は代えられないということです。

表面的にはリュートだけが弦について妥協していると思われがちですが、こうして他の古楽器について一段深く掘り下げますと実は弦について様々な妥協点があったり、未解決の部分があったりすることがわかると思います。

さて、先日アキラに注文してあったガット弦(HLシリーズ)が一昨日届きましたので早速1コースだけ0.42を張ってみました。昨日までに高いポジションを使う音階練習とヴァイスのソナタ39番プレストを3時間弱弾いてみました。右手の弾弦位置に少しほつれと、左手のハイポジションに小さなケバが出てきましたが、今のところ音はまだ気持ち影響が感じられるかなというレベルです。でも近い将来多分この右手のほつれの位置から切れると思います。

1コースFに0.42は少し張力が高い(71cm、415で4キロを超えます)ので次は0.40を試してみるつもりです。ナイロンの0.45がガットの0.40と大体同じ張力になります。アキラのガット弦の試用についてはあらたにタイトルをおこしてエントリーしていきます。