リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ヴァイスからマッテゾンへの書簡(3)

2021年04月24日 13時40分33秒 | 音楽系
「しかし、オーケストラの中でリュートで伴奏するのは、なるほど音が弱すぎ、目立ちませんが」

もちろん当時のオーケストラですから今でいう古楽オケです。リュートがオケの中で聞こえにくいのは今も昔も同じです。以前アマチュアのオケでリュートの通奏低音を頼まれたことがありました。頼んでくれたのはいいのですが、どうも指揮者は全くリュートのことを理解していなくてとても苦労しました。ピッチが440で楽器に負担はかかるのも困りましたが、座る位置も奥の方でしたので、多分ほとんど聞こえていなかったと思います。

ヴァイスの書簡では音がよく通って評判が良かった例として、著名な歌手とオペラのアリア(ハッセあたりのオペラでしょうか)を婚礼の席で演奏したときのことを述べています。成功の要因として、よく鳴る楽器、ブリリアントな曲、他の楽器はバスのみを弾いていたということを挙げています。まぁその通りでしょう。もちろんヴァイスが弾いたということも成功の大きな要因でしょう。

ヴァイスはオケで演奏するときは特別な楽器を使っていたようです。

「・・・現在では私はオーケストラや教会での伴奏の際には特別の楽器で合わせています。それは正真正銘のティオルバ(Tiorba)の大きさ、長さ、パワー、そして響きを持ち、同様の効果を発揮します。ただし調弦だけが異なるのです」

この「調弦だけが異なる」というのはどういう調弦をしていたのでしょうか。