リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ネズミ捕り(2)

2021年06月08日 06時23分10秒 | 日々のこと
猫や蛇が捕ったネズミは彼らが食べてしまいますが、人間が捕ったネズミは食べるわけには行きません。食糧危機のときには仕方なく食べたこともあったようですが、食べても大して美味くなかったのでしょう。ではどうするのか。

ウチはカゴ型のネズミ捕りを使っていて、中に餌がありそれをめがけて食いつくと入り口の扉が上から降りてきて、哀れなネズミは捕われの身となります。それを父親と一緒に、近くを流れる江戸時代に作られた用水路に持っていき、小さな橋の上からネズミが捕われているそのカゴを紐につるして流れに浸します。ときどき様子を見てまだ生きていたら再度流れに戻します。

「とーちゃん、もう死んだかなぁ」
「まだや、まだまだ」

なんて残酷な会話なんだろうと今になっては思いますが、ネズミが増えすぎてはいけないとこっちも必死ですからそんな風には考えたことはありませんでした。そして多分あの世にいっただろうという感じになったらカゴからネズミを出して用水に流してやります。そして流れていくのを見て手を合わせます。

昔は家の中にネズミ、蛇だけでなくハエ、蚊、ゴキブリなんかが一杯いました。ヤモリも外壁に張り付いたりしていました。名前の知らない、噛まれるとかゆい緑色の虫もいました。街にはトンボやチョウチョもよく飛んできました。夕暮れ時には蝙蝠も。少し離れたところにある田んぼには蛙、タニシ、キャベツ畑には青虫も。人間はそれらと共生し、時には対立していたわけです。わずか60年前の同じ場所のことですが、世界観、死生観は現在と何と異なっていたことでしょう。今私たちはどこにいて、これからどこへいくのでしょうか?

※私が住んでいるところは山の中でも近くでも田園地帯でもありません。桑名の旧市街で江戸時代は足軽の住宅地だったところです。町屋川という川から引かれた御用水(上水路)があった道の向かいは町衆(商人)が住んでいた住宅の裏手、その入り口は東海道に面しています。