リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

しゃくり女王

2021年06月24日 16時09分57秒 | 音楽系
ギターの方に技術な負担が少ない二重奏の編曲を頼まれています。まぁ簡単に弾ける編曲でということですね。

編曲希望の曲リストを3曲頂いているのですが、ひとつはNHKのテレビの街歩き番組のテーマ曲、2つ目はカタカナ名の女性歌手が歌っている曲、そして3曲目は柑橘系の名前のグループの曲です。

さわりだけ聴いたことがあるものもありますが、きちんと知らない曲ばかりなので、どういう曲かはYou Tubeで確認しました。編曲の手順としては次のようなものです。

1.You Tube で曲を確認して、メロディを採譜。
2.曲の構成はオリジナルを踏襲して、調性を決める。
3.あとはナカガワスタイルでSibeliusに直接楽譜を書き込んでいき、完成!

いずれの曲もオリジナルとは異なるハーモニーをつけることにしています。(リハーモニー)出来上がった編曲に運指も付けますが、いちいち楽器(ギター)で弾いてみることはしません。というか最終的に編曲が完成するまで一度も楽器には触りません。

苦労するのは、1.の採譜時に出てくる「しゃくり」ですねぇ。音程のない、あるいは不明瞭なしゃくりが多い歌い方の曲は苦労します。楽譜に書けないからです。このしゃくりというのは、バロック音楽でいうアポジャトゥーラみたいで音程はちゃんとあるものと理解していたのですが、どうもそういう理解ではない歌手もいるようです。

典型的なのは、今回の曲ではありませんが、「年配の女性歌手でとても高学歴な方」の歌い方です。もう妙なしゃくりが多すぎてメロディのラインが出てくるのは長く伸ばしている音だけという曲もあります。全くしゃくり女王です。

ちなみに洋楽ではどういう歌い方をするのかをYou Tubeで少し調べてみました。聴いてみたのは、最近のものでは、Bruno Mars、Justin Biever、古いところでは The Beatlesで確認してみました。彼らの歌い方には日本の歌手がやっているようなしゃくりはありません。もちろん装飾的な動きはありますが、音程ははっきりしています。

でも全ての日本人歌手が音程不明のしゃくりっぱなしかというとそうではありません。昔の尾崎紀世彦や布施明もチェックしてみましたが、彼らは欧米の歌手と同じような歌い方で、音程不明瞭なしゃくりはありません。三波春夫のこぶしもきちんと音程があるので綺麗に楽譜に書けます。

この妙なしゃくりをいれるとたとえ音程がきちんと出ていなくても歌がうまいとされているのかも知れません。以前テレビCMで女性歌手が歌う「ゆーめであえーたな~ら~」という曲で、「ゆーめ」と「あぇー」が下に大きくしゃくっていて音程がありませんでした。こうなってくるともうメロディラインなんてどうでもいいって感じですね。(笑)歌手が劣化しているのか、リスナーも劣化しているのか、あるいはその両方か。ちゃんと一定の音程間隔でグリッサンドしてくれればいいのですけど、喉の奥に低く響かせるだけで音程不明なしゃくりをつけるのはいけません。