リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

懐かしの楽器たち(11)

2021年08月31日 22時17分08秒 | 音楽系
櫻井氏の10コースルネサンスは結構長く使っていた楽器ですが、よりルネサンス的な7コースの楽器が欲しくなり、デュルビーのバロックを入手してすぐに彼に注文しました。デュルビーのバロックは注文して4年くらいで届きましたが、ルネサンスはそれよりもう少し短かく、1985年に完成しました。




同じルネサンスでも10コースと7コースとは単に弦が多いというだけの違いではありません。10コースはブリッジ付近の弦幅がどちらかというとバロック・リュートに近い感じですが、7コースはフィゲタをより弾きやすくためにブリッジ付近の弦幅がかなり広いです。

よくルネサンスリュートを買うとき10コースなら大は小を兼ねるので10コースがいい、とおっしゃる方が昔はいましたがこれは大きな間違いです。今ではさすがにそういう人はいないでしょうけど。

今回のデュルビーのルネサンスはバロックのように日本まで持ってきてくれる人がいないので、普通に送ってもらいました。ぼちぼち到着だというある日税関から電話がありこの見慣れない楽器は何かと問い合わせがありました。リュートと答えると税関のリストにすでに挙がっているといううわさがあったので、とっさにバスマンドリンと答えました。

で、値段は如何ほどかと聞かれたので、9万円くらいと答えておきました。「あなた、いい加減な値段をいうんじゃないよ。ホントはもっと高いんでしょ?」と言われるかとびくびくしていまいたら、帰って来た返事は「いやー、こんなに高価なものなんですか」「は、はーい。そ、そうです。いろいろ大変なんですよ」

意外な返答に驚きました。世間一般の人の認識は違うんですね。でもありがたかったです。

この7コース弦長60cmのルネサンスはその後ずっと使い続け、2008年にモーリス・オッティジェーの楽器に替えるまで弾いていました。明るい音色でとても音量のある楽器でした。