リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

懐かしの楽器たち(1)

2021年08月11日 21時23分41秒 | 音楽系
私が初めてリュートという名前の楽器を手にしたのは1972年のことです。それから今に至るまで一体何台の楽器を手にしたのかわからない程いろんな楽器を購入いたしました。別にお金持ちだからだった訳ではなく、買っては売りを繰り返してきただけなのですが、現在は手元に演奏に使う楽器が5本あります。(あと頂いた楽器2本と自作が1本あります)

まず記念すべき第1本目ですが、1972年の春に購入しました野上三郎氏作の8コースルネサンス・リュートです。まだ学生だったので必死で家庭教師のアルバイトを掛け持ちして資金をためたことを覚えています。楽器のお代がいくらだったかは覚えていませんが、20万くらいだったと思います。当時30万出せばギターのホセラミレスが買えましたから結構なお値段だったと思います。

この楽器は独自の作りで、構造は歴史的な楽器とは異なりペグもなんと「片支持」でした。製作者曰く「ペグがスムーズに回るように片方だけの支持にしておいた」のだそうですが、実際にはスムーズには回りませんでした。

当時リュートを作ると看板を挙げていた製作家はおひとりしかいなかったのですが、フォルムも音も私の頭の中にあったリュートとは相当異なっていました。

それまではギターの3弦を半音下げてリュート曲を弾いていたのをやっと本物のリュートで演奏できる、という期待が崩れたのは相当のショックでした。そんな中名古屋にリュートの製作を始めたギター製作者がいるという情報を得ました。大学3年生であった私は音楽の方に進もうと、大学は授業に出るのをほとんど止めて音楽活動に精を出し始めた頃です。