リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

川瀬巴水展

2023年03月28日 20時54分43秒 | 日々のこと
今日は気温も上昇し桜は満開、まさに春爛漫です。

少し前に行こうと思っていてすっかり忘れていました、川瀬巴水展。昨日テレビを見ていたら偶然今日が最終日だということに気づき、会場のパラミタ・ミュージアム(三重県三重郡菰野町(こものちょう))に出かけました。

このパラミタ・ミュージアムは公益財団法人岡田文化財団が運営する美術館で、知る人ぞ知る充実した展示を誇る大美術館です。まさに「菰野のおおもの」です。(笑)岡田文化財団はあのイオンの関連団体で、三重県下のアーチストに活動援助をしている団体でもあります。私も10年くらい間にここの援助を受けてリサイタルを開催したことがありました。

巴水は衰退しつつあった江戸時代の浮世絵を明治の時代によみがえらせるべく興った「新版画」というジャンルを牽引した版画家です。



展覧会では巴水の画業を6つに区切り300点近い作品が展示されていて圧巻でした。印刷物やテレビで見るのとは全く異なり、実際の作品ではある特徴的な印象を受けました。それは巴水の作品は「光と水」の表現だということです。そこに何か巴水の少し前のフランスで興った「印象派」と相通じるものを感じました。

ただ巴水の光は印象派とは異なりほとんどが淡い光、あるいは暗闇、水はその淡い光を反映する一瞬のさざめき、あるいは雨、あるいは雪です。そもそも川瀬巴水という名前からして全て水関連ですよね。巴はもともと蛇の意味らしいですが転じて渦巻きを表すそうです。流れる川の瀬の渦巻く水ですね。

パラミタで作品集を買ってきました(上の写真)。それによりますと、21年秋のSOMPO美術館を皮切りに全国を巡回し、このパラミタ・ミュージアムが最後だということでした。最後の最終日に行けてラッキーでした。ちなみに表紙の作品「新大橋」は、印刷されたものと現物とは全く印象が異なります。真逆といっていいかも知れません。実際の作品は闇とそこに光るガス灯そしてそれを反映する雨水が妖しくも絶妙なバランスで表現されています。それにしても当時の夜は暗く、ガス灯の光も今のLEDと異なり詩情があったんですね。