リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

絵本太功記

2024年10月05日 19時38分58秒 | 音楽系

文楽を見に行ってきました。会場は津市の三重県文化会館中ホールです。このホールは三重県総合文化センター内にある施設で、この文化センターで教員時代の30年以上前に高円宮杯全日本中学校英語弁論大会の三重県予選を何回か運営したことがあります。当時は出来たばかりの建物でしたが、さすがに少し年期が入って来た感じがします。中庭にカラフルな彫刻がありましたが、塗り直し作業の真っ最中でした。

会場内のカフェで簡単な食事をとって中にはいりますと、文楽の人形が展示してありました。

今回の演目は二人三番叟と絵本太功記です。実は文楽のライブを見るのは今回が2回目。1回目は徳島に行ったときに見ましたがこれは短い簡略的なものでした。本格的なものを見るのは今回が初めてです。

この絵本太功記は本能寺の変を題材とする時代物だそうで、1799年に大阪の道頓堀若太夫芝居で初演されたと解説に書いてありました。全編はとても長いので今回は夕顔棚の段と尼崎の段の2編の上演。この2編でも1時間半くらいかかります。

上演に際しては左側に字幕があるので助かりました。さすがに太夫の語りだけでことばの意味を理解するのは難しいです。私は弦楽器奏者なので三味線のプレイについ耳目が行ってしまいがちです。絵本太功記の三味線は三人の方が交代で演奏しましたが、その中で一番最後に登場した鶴澤清介の三味線が圧巻でした。そもそも調弦を始めた第1音からして音が違いました。テクニックは素晴らしく太夫の語りによりそってストーリーを作って行く技量は大変なものだと思いました。まるでリュート一本と福音史家で受難曲をやるようなものです。もっとも太夫は歌唱はしませんが。

ヨーロッパのオペラは沢山の音を使い、沢山の人が登場してストーリーを展開しますが、人形と太夫の語りと三味線という全く別の方法でオペラに匹敵する舞台劇が展開できるとは、すごいものが日本にはあるものです。