リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ペグの回し方(1)

2024年10月06日 13時57分49秒 | 音楽系

リュートは産業革命以前の産物なのでいろんなところで現代人には多少の不便を強いることがあります。ペグに関することもそのひとつです。

一部のロマンティック・ギターではペグ仕様のものもありましたが、多くは金属のギアを回して調弦します。金属ギアがついているペグはロー・ギアになるので「大きく回して、少しずつ音程が上下」します。この方が当然音程は細かく合わせやすいわけです。さらに木のペグと異なり絶対に抜けることはありません。

私はこういった仕様のペグがついているギターがとてもうらやましいく思います。リュートの場合は、ギヤ比は車でいうとトップ・ギアと同じハイギアードですので、指で回した分と同じ回転で弦を巻き上げたり緩めたりします。ほんの数セントに満たないくらいの音の狂いを修正するのは、一発で決めるのはなかなか難しく「運」も影響してきます。

上の絵はフェルメールの有名な絵ですが、以前はリュートを弾いているところだとされていますが、今はそうはいわれていないようです。この絵については以前当ブログでも書いたことがありますが、絵の女性は少し前まで11コースバロック・リュートの5コースか6コースあたりを調弦していたが、何かに気づいて調弦するのを止めたところ、が描かれています。

調弦をしている最中でない証拠に左手は調弦しようとしているコースのペグを触っていても、右手はその弦は触っておらず10コースあたりの上に来ています。何かに気づき窓を見たらふいに右手が調弦している弦から離れてしまったのでしょう。

女性が何に気づいたかはさておき、正しいペグの回し方をよく表していると思います。