大昔私にとって初めてのリュートが完成したというので製作家野上三郎氏のスタジオを訪れました。氏は完成した楽器を手に取り、まず始めにリュートを調弦するときの注意事項を教えてくれました。楽器を演奏するときのようにかかえたまま調弦するのではなく、自分の前に楽器を置き右手と左手でペグを回しなさい。そのとき顔を近づけすぎると、弦が切れたりペグが抜けたりしたときに弦が目に当たるので注意しなさい、というような内容でした。
今聞くと笑い話のような内容ですが、もちろん調弦するときは演奏するときと同じように楽器を構えて左手でペグを回します。
注意することは演奏しているときとは異なり右手はより斜めにして楽器を自分の方と右膝上に軽く押さえ気味にすることです。前回のフェルメールの絵のような感じになります。
バロック・リュートの弾き方は、右手アームを下の絵のようにしていました。
これが調弦するときには右アームがフェルメールの絵のような角度になるわけです。
さらに重要なことはペグを回すときはペグボックスに押し込み気味にすることです。これをやらないと数回も回さないうちにペグはポロッと抜けてしまいます。ペグの棒は円錐状になっていて先の方が少し細いです。これは突っ込みながら回すことによって抜けないようにする工夫です。ペグを円柱状にしたらうまくしまりません。酒樽などの栓も同じ仕組みです。