リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

なぜニ短調調弦が残ったのか(1)

2022年06月10日 22時38分05秒 | 音楽系
いわゆるバロック・リュートの調弦は高い方から、ファレラファレラ、ソファミレドシラです。押さえる弦は主に1コースから6コースで、1~6コースまでをバランと弾くとニ短調の主和音になります。そういうことからこれをニ短調調弦と呼んだりもします。

ダウランドの頃より前の時代のリュートはニ短調調弦ではなく、相対的には今のギターととてもよく似た調弦でした。17世紀の初めにいろんな変種の調弦が流行してその中から先のニ短調調弦が優位に立ち、その後もリュートそのものが廃れるまでその調弦が主流になります。

いろんな変種を試してみたけど、やっぱり前の調弦の方がなにかといいことが多い、という風になるとか、その後いくつかの調弦が並立していった、という風になってもよさそうなのにどうしてニ短調調弦に収れんしていったのか。

これはニ短調調弦の1~6コースが3本ずつ「相似形」になっているからです。つまり1~3のファレに対して、4~5はそのオクターブ下のファレラになっているのです。

つまり1~3コースの3つのコースを合わせたら、4~5はそのオクターブ下なので合わせるのがとても簡単です。昔からいろんなテンペラメント(調律法)がありますが、どのテンペラメントであってもオクターブとかユニゾンは同じ音でなければなりません。

一般にはチューナーで一本一本音を合わせている方が多いと思いますが、チューナーを使わない場合はどうやって調弦したらよいのでしょうか。

iPhoneもUSB Cに!

2022年06月09日 14時52分18秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】
EUが域内の電子機器の充電端子をUSB C に統一するようです。iPhone はライトニングと呼ばれる端子しかありませんから、この統一方針は事実上iPhoneに向けてのものでしょう。私もiPhoneを使っていますが、USB C になればそれなりに便利かなという感じはします。今使っているソニーのDAPもType Cだし。でも別にいまのままでも特に不便は感じません。

それよりEUってちょっとえらっそーじゃありません?少し前の自動車のディーゼルからEVへの急展開だってなんか自分たちの都合でやりたい放題みたいな感じがします。

EU=ドイツ=中国の思惑という繋がりがあるのかと勘ぐったりしますが、まぁそんなわかりやすいものではないでしょう。こういった規格のデファクトスタンダードは市場が決めるものだと思います。

まぁ確かにアップルも自社規格の押しつけみたいなことをやっていますので、どっちもどっちという感じはします。それに接触部がむき出しのライトニングはなんとなく気にはなります。でもUSBの規格はいろんな接続規格の競争を勝ち抜いてきたものです。昔はいろんなのが乱立していました。RS-232Cでしたっけ、プリンタをつなぐでっかいやつ。SCSIとかIEEE1394なんかもありました。USB自身もいくつかあって、Type Cではやっと裏表のないものになりました。

放っておいても今後ライトニングがUSB C を駆逐することは絶対ないでしょうし、恐らくそのうちAppleもType Cに流れるでしょう。市場にまかせておけばいいのです。EUさん、あんたがやることではないです。

満開!

2022年06月08日 14時45分05秒 | 日々のこと
ウチの天然どくだみ園の花も満開で見ごろを迎えています。といってこれを一輪挿しにするのはちょっと匂いがきついのでできません。花は綺麗なんですけど…



ドクダミは一般的にあまり日が当たらないじめっとしたところに生えるみたいですが、なぜここにドクダミが群生するのかというと、ここはやはり日照時間が短く水分にも恵まれているところだからです。場所は我が家の東側沿いの南北ですが、東側にはお隣りさんの建物があり、南側(写真でいうと後ろ側)には狭い道を挟んで高い建物があります。従って「天然どくだみ園」の日照時間はそんなに長くないはずです。

Wikiで調べてみましたら、「ドクダミは半日陰から日陰の湿地を好む」とありましたからウチの天然どくだみ園はぴったしの環境です。Wikiにはさらに茎が水に浸かっていれば臭わないと書いてありました。これは知りませんでした。

春先、まだ茎が枯れていた頃、何種類か別の草が生えてきていました。お、今年はドクダミの勢力が弱まっとるのかな、と思っていましたが、結果はこの通り、ドクダミの圧勝です。なかなかの生命力です。ネコも臭いがつくことを知っているのか近づきませんし、ドクダミがうまい具合に地面を覆ってくれるので背の高い雑草が生えないのでありがたいです。お陰で夏の草刈りは不要です。


レイアウト

2022年06月07日 12時05分40秒 | 音楽系
2020年の2月頃に半年近くかけた翻訳、VARIETIE OF LUTE-lessonsを書籍の形にするべくイラレでレイアウトを始めています。翻訳は当ブログに連載しましたが、連載終了後にすぐレイアウトを始めたらよかったのですが、しばらくほったらかしにしていていました。別に忘れていたわけではないのですが・・・

翻訳がちょうどコロナ禍が始まる直前に終了し、コロナ禍の出口が見えてきた最近書籍化始動というのは何かの因縁?コロナウィルスが書籍化を妨げていた?みたいな感じもしますが単なる偶然でしょう。

出版をいくつかの出版社に持ちかけましたが、ニッチなものだけになかなか取り合ってくれないので、取りあえず「ナカガワプロジェクト」(プライベート出版レーベル)で形にしてからまた売り込んでみようかと考えています。あるお方から出版するための補助を申請する方法もあるとアドヴァイスも頂いています。

ブサールとダウランドの小論のみを書籍の形にしようかとはじめは思っていましたが、曲集の部分もつけることにしました。タブは現代式のものに書き直すことも考えましたが、原典のそのまま掲載することにし、原本の印刷ミスを校正するだけにすることにしました。また五線譜もつけてはとも考えましたが、すでに何点か出版されているのであまり意味がないので、これもやめました。要するに原典の英語を日本語に置き換えるということだけに限定することにしました。

まぁそうすると売れるのは日本国内(日本語ネイティブ向け)に限られてしまうのが残念なところですが、翻訳本という性格上これは仕方ありません。

翻訳と脚注は出来ているので毎日少しずつ進めたら多分一か月もあればできるのではないかと思います。ブログに連載したものから少し訳の手直しをしていますが、レイアウトをしている内にまた手直しを始めたらもう少しかかるかも知れません。


監獄ホテル

2022年06月06日 18時37分24秒 | 日々のこと
奈良市の旧奈良監獄がホテルとして生まれ変わるそうです。レンガ造りの美しい建物の旧奈良監獄は第二次世界大戦終戦後に少年刑務所という名称に改められ2017年に廃庁になるまで刑務所として使われており、2017年には重要文化財に指定されました。

ホテル業界ではよく知られた星野リゾートが旧奈良監獄エリアを整備し、監獄の建物は「監獄ホテル」として2024年の開業を目指すそうです。話題性もあるし、コロナで縮小した旅行需要も戻ってきているでしょうから、きっと大はやりになるに違いありません。でも星野リゾートが開発しているところは皆高級路線なのできっとお高いものになるのでしょうねぇ。

ヨーロッパにも向かいの監獄を改装してホテル化しているところがいくつかあるようです。横縞模様がはいった囚人服を宿泊客に提供しているところもあるそうな。

私がスイスのバーゼルに行くときに定宿にしているホテルも実は旧監獄です。市の中心部であるバフューサ広場からほど近いところにあり、スコラ・カントルムもすぐ近くにあるとても便利な所に立地しています。宿泊代はとてもリーズナブルですがとても清潔ですし、レストランの食事もとてもおいしいです。一見すると昔ムショだったという風には見えませんが、入り口の間口が狭く高さも低く、そして壁がとても厚いのがかつてを忍ばせます。

カエルの祟り

2022年06月05日 16時01分03秒 | 日々のこと
昨日近所の病院で大腸内視鏡検査を受けてきました。何年か前に市の無料健康診断で検便に潜血反応が出たので大腸内視鏡検査を受けることになりました。そのときにポリープが見つかり切除してもらいました。念のためにとその半年後にまた内視鏡検査を受けましたらまたひとつありました。

ポリープがよくできる体質なのか前回に先生が見逃していたのかはわかりませんが、そのうち大腸がんになるかもしれないと言われたので怖くなって毎年受けることにしました。それ以来春から夏にかけて必ず受検しております。

一番最初に受けた検査はもう気絶するのではないかと思うくらい痛かったです。子供の頃カエル風船というのをやって遊んでいましたが、その哀れなカエルもきっと私と同じような痛みを感じていたのかも知れません。その痛みにこの歳になって巡り合うとは、きっとカエルの祟りがあったのかも知れません。それ以降は必ず鎮静剤を入れるように先生に念を押しています。

鎮静剤を投入するとあっと言う間に眠りに落ち、気が付いたら終わっていたという感じですが、今回はまだ祟りが残っていたのか、途中で妙に痛みが感じられ目が覚め一瞬もだえ苦しみました。その後また眠りに落ち、目が覚めたら検査は終わっていました。毎日カエル風船遊びをしていたわけではありませんが、哀れにも風船になったカエルは確かに1匹や2匹ではありませんのでこの先また鎮静剤が切れかけるということもあるのかも知れません。

大腸には異常はなく無罪放免です。また来年の今頃受検です。


プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(23)

2022年06月04日 00時02分27秒 | 音楽系
アレグロの3ページ目(最終ページ)



3ページ目はガラっと様相が変わってリュートの音域にマッチしたフレーズが続きます。楽器的に見ると「様相が変わった」という感じを受けるだけで、転調して弾きやすい=リュート的にはおいしいエリアに入ったということです。

このあたりがそもそもこの曲の鍵盤楽器的なところだと思います。鍵盤楽器だと少し低い音域に入っても急に弾きやすくなるわけではありませんが、リュートだと(他の弦楽器もそうでしょうけど)大きく景色が変わります。逆に考えるとバッハはひょっとするとこの曲をリュートで弾いた場合の景色の変化を密かに狙っていたのかも知れません。

3ページ目には技術的な難所はありません。「普通に難しい」だけです。(笑)

66小節の2拍目のアタマは多くのアレンジでは f (オリジナルの調だと es )ですが、自筆譜では fis (同 e )ですので、左手のエクステンションが必要です。

これで全曲をご紹介しましたことになります。ほぼこれでアレンジは確定し大幅な変更はないと思います。というかしない予定です。でも小さな変更というか改良は多分ずっと続き終わることはないと思います。このあたりがヴァイスと大きく異なる点です。ヴァイスはすでに彼が楽器的に(もちろん音楽的には)完全なものを残してくれていますが、バッハ作品は音楽的には完璧なのは言うまでもありませんが、リュートという楽器的な面から見ると奏者が楽器に合わせたものを作るしか他はないからです。

納期長期化

2022年06月03日 12時34分09秒 | 日々のこと
新車の納期が長期化しているようです。先日もミニのディーラーから納車が遅れ気味なので注文するなら今のうち、みたいなないようなはがきが届いていました。まぁべつに新しく買うつもりはありませんけどね。

試しにトヨタ車の納期を調べてみましたら、驚きました。人気量販車ヤリスが4、5カ月、アクアで5、6カ月程度です。何車種かは「詳しく販売店にお問い合わせください」になっています。これってひょっとして年単位で待つということ?

何でも世界中で大人気の300系ランドクルーザーの納期は4年!と発表されているそうです。4年と言えば、もはや人気リュート製作家並みですね。私の場合一番納期に時間がかかったのは、当時スペインに住んでいたルーデス・モレノ・ウンシージャのアーチ・リュートで8年でした。これは例外で普通は3,4年といったところでした。

リュートはもともとこんなものですが、自動車でこれだけ軒並み納期が遅れているということは、販売店は本当に大変でしょう。販売店は受注しただけではほとんど儲けにはならず納車してナンボですから。車だけではなく、カメラとかミュージック・インターフェイスなんかも供給が滞っているようです。昨年夏に発売されたFireface UCX IIは初期ロットが完売した後はずっと納期未定になっています。私が使っているAntelope Discrete 4 の新型、Discrete 4 Proが先ごろ発売されましたが、現在のところは大体のショップは在庫ありです。でもこれもそのうち納品ストップになってしまうかも。買うなら今?

世界の情勢を見ていると改善につながるようなニュースは見当たらないですが、こういった状況がいつまで続くのでしょうか。

プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(22)

2022年06月02日 13時34分08秒 | 音楽系
フーガ編その2

フーガは8段で印刷するとA4で3ページになりますが、今回はその2枚目、32小節~55小節までです。



このページは難所がいくつもあります。リュートは10フレットあたりでもギターだと14フレット以上を弾いているような感じになります。弦幅が広がり複弦の幅が広がりかなり弾きにくくなります。ヘ長調編曲の場合は最高音がFになりますので、そのあたりで動いているフレーズは弾きにくいのと、あと音がキンキンしがちになるので注意が必要です。

難所その1:35,36小節:バスに関してはそれほど難しくないですが、中声部のテーマを弾きながらポジション移動をしていきます。

難所その2:一難去ってまた一難と言う感じですが、39、40小節です。そんなに無理がある訳ではありませんが、音が出にくいポジションを使うので力み過ぎてキンキンしないように弾く必要があります。

難所その3:41小節目。ここはものすごく弾きにくいところです。指のエクステンションが必要ですし、複弦を押さえ損なわないようによく練習してかつ細心の注意を持って弾く必要があります。

難所その4:43小節~44小節の冒頭。こういうところはシングル弦だったらまだだいぶ楽ですが、5~3コースが複弦なのでフーガのテーマをきちんと聴かせるのはなかなか大変です。

あとは「普通に難しい」かなという感じです。1ページ目も結構大変な箇所がありますが、2ページ目は難所のオンパレードです。次の3ページ目は音域が少し低くなるのでそれまでよりはずっと楽になります。

このタブは何度も弾いて運指も含めて検討を重ねたタブなので、そこらのネットにころがっているような演奏不可能なものではありません。お時間がある方はぜひ実体験をして頂くといいかなと思います。


ラーメンは2000円!

2022年06月01日 12時38分26秒 | 日々のこと
ネットのニュースで、1600円に値上げしたラーメン店の話が出ていました。そこは何でも超人気のラーメン店だそうで、昨今の原材料の高騰が理由かと思いきや、ラーメンの未来のために価値観を上げていきたいというのが主な理由だそうです。

スイスのバーゼルにいた2003年頃、初めて彼の地にラーメン屋さんが開業しました。屋号は Namamen 生麺ですね。あまりおいしそうな感じがしない名前のお店でしたが、新規開業と言うことでとてもにぎわっていました。私も早速行ってみましたが、どうも日本人がやっている店ではなさそうでした。お味はというと、これが最低レベルで麺も大して美味くなかったですがスープがひどいもので、出汁を全くとってないような味でした。それで20フラン(当時のカン残額で2000円弱)を取っていました。

ラーメンに限らず日本の外食はお値段が安すぎます。500円以下のものでも結構おいしくて腹の足しになるものが食べられますが、バーゼルではあり得ない話で、1000円以下で食べられるものはケバブくらいで、スパゲッティだと2000円を超すのが普通でした。そのころ行ったロンドン何かもっと高かったです。

下宿先の近所にあったスーパーで売られていた食材も日本よりはるかに高いのかと言うと、それは実は日本と大体同じレベルでした。外食が高いのは簡単に言えば人件費が高いということなんでしょう。日本の外食が安いのは人件費が安すぎるということです。

50年以上前、街の喫茶店でハンバーグランチなんかをよく食べましたが、結構お値段は高かった記憶があります。700円とか800円くらいはしていたと思います。衣料品でもパンツは1万円くらいが相場でした。5000円切る値段でパンタロン(当時はやってました)が出ているというチラシが新聞に入っていたら安いなぁと思ったものでした。

国内で労力に見合うだけの賃金を考えたら、そのくらいが妥当だったんでしょう。ユニクロで売っている3000円のジーンズは、安い賃金で働いている人(この場合は国外でしょうが)がいるから可能なプライスでしょう。

価値に見合う価格、ラーメン=2000円というふうになっていくべきだとは思いますが、一気に2000円にしますというのは、冒頭の人気ラーメン店だからできることでしょうけど、でもラーメン店に限らず全ての外食はもっと値上げをして働く人の給料を上げるべきだと思います。とはいうものの一筋縄では行かないのは明らかでしょうから、道筋は経済政策の専門家にまかせることになりますが、我々一般ピープルもそういう方向に向かうべきだという合意は持っているべきでしょう。