リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(23)

2022年06月04日 00時02分27秒 | 音楽系
アレグロの3ページ目(最終ページ)



3ページ目はガラっと様相が変わってリュートの音域にマッチしたフレーズが続きます。楽器的に見ると「様相が変わった」という感じを受けるだけで、転調して弾きやすい=リュート的にはおいしいエリアに入ったということです。

このあたりがそもそもこの曲の鍵盤楽器的なところだと思います。鍵盤楽器だと少し低い音域に入っても急に弾きやすくなるわけではありませんが、リュートだと(他の弦楽器もそうでしょうけど)大きく景色が変わります。逆に考えるとバッハはひょっとするとこの曲をリュートで弾いた場合の景色の変化を密かに狙っていたのかも知れません。

3ページ目には技術的な難所はありません。「普通に難しい」だけです。(笑)

66小節の2拍目のアタマは多くのアレンジでは f (オリジナルの調だと es )ですが、自筆譜では fis (同 e )ですので、左手のエクステンションが必要です。

これで全曲をご紹介しましたことになります。ほぼこれでアレンジは確定し大幅な変更はないと思います。というかしない予定です。でも小さな変更というか改良は多分ずっと続き終わることはないと思います。このあたりがヴァイスと大きく異なる点です。ヴァイスはすでに彼が楽器的に(もちろん音楽的には)完全なものを残してくれていますが、バッハ作品は音楽的には完璧なのは言うまでもありませんが、リュートという楽器的な面から見ると奏者が楽器に合わせたものを作るしか他はないからです。