院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

金山駅老女刺殺事件

2011-03-25 11:11:24 | Weblog
 名古屋、金山駅の老女刺殺事件がふたたび報道された。検察審査会が起訴相当としたからである。

 検察審査会はポピュリズムである。小沢一郎氏について2度も起訴相当とした。世論に迎合しているというか、検察審査会が素人で構成されているので、組織自体が世論といってもよいかもしれない。

 だが、このたびの金山駅老女刺殺事件は、いちど検察のこれまでのやりかたを再考するのに、よい機会だと思う。

 それは、いわゆる起訴前鑑定に私はつねづね疑問を抱いてきたからである。起訴前鑑定とは、検察が起訴する前に精神科医に頼み、心神喪失かどうか精神鑑定する習慣である。

 我が国では検察が起訴した犯罪の99%以上が有罪となっている。異常な高率である。金山刺殺事件も起訴前鑑定で、精神科医が心神喪失と判断したから、不起訴となっていたのだろう。

 起訴前鑑定は、あまり時間をかけない。私も頼まれたことがあるが、あまりに安易だと思ったので断った。

 検察は裁判で負けると分かっているから、心神喪失を不起訴としてしまうのだ。荒っぽく言ってしまえば、検察の成績を上げるためである。

 私は一度は起訴して、裁判所が本式の精神鑑定を依頼すればよいと考えている。裁判所の依頼による精神鑑定は、もっと丁寧に行われる。「鑑定留置」といって、一定期間、精神科病院に「留置」し、何日間もかけて鑑定が行われる。

 そのようにして、心神喪失が認められれば、裁判所が無罪の判決を出せばよい。そのような手間を省いて、起訴前鑑定だけで不起訴にするというやり方は、検察の越権行為であると私は思う。

 長い目で見れば、そのようにした方が国民に対しても、事件を起こさない圧倒的大多数の患者に対しても、事態を透明化するのに役立つだろう。