(誠文堂新光社刊。)
まだコンピュータソフトがフロッピーディスクで供給されていた20年前、フロッピーディスクにはコピーされないようにプロテクトがかかっていた。プロテクトを知恵の限りを尽くして破ることが流行って、そのための解説本が売られた(上図)。
最後は、プロテクトの破り方が分からなくても、元のフロッピーディスクを丸ごとコピーしてしまえば、プロテクトごとコピーできて、少なくともそのフロッピーディスクは使えるという発想が出てきた。
中味を詳細に理解できなくても目的を達成できることがある。クローン技術がそれである。生殖なしでクローン生物を造れるようになったが、できた生物の仕組みの細部までは分からない。
上あご下あごの遺伝子と舌の遺伝子は別のはずである。しかし、新しい個体(赤んぼう)は、舌はあごのサイズより必ず小さく、口を動かしても上あごと下あごが絶対に舌を噛まないように巧妙にできている。この仕組みを詳細に知ることは、クローン技術よりも難しいだろう。
クローン技術は、プロテクトごとフロッピーディスクをコピーしてしまうことと非常に似ている。