Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

ぴんからトリオ《沖縄のひと》

2014年06月03日 | CD・DVD・カセット・レコード
 先週の日曜日、国分寺の実家の傍のリサイクル屋にぶらりと寄ってみたら、沖縄に住んでいる頃ちょっと気になっていた、ぴんからトリオ《沖縄のひと》のシングルレコードを見つけた。もう沖縄を離れて2年以上経つのだが、やはり「沖縄もの」は気になってしかたがない。ということで50円を払ってこのレコードを買ったのだった。実はこれ、ぴんからトリオのデビュー盤である。A面の《女のみち》は当時大ヒットで、B面の《沖縄のひと》なんて全く注目されなかった。いうなれば、何か収録しなくちゃならないから録音した一曲なんだろう。
 しかし私にとって重要なのは、このレコードが1972年5月に発売されているということなのだ。この年月は、沖縄の歴史にとって重要である。1972年5月15日、沖縄は本土に復帰して「沖縄県」になった日だからだ。ちなみにこのレコードの発売は1972年5月10日なので、復帰5日前ということになる。明らかに沖縄の本土復帰を意識したB面の収録曲だったわけだ。
 さてそんな薀蓄はいいとして、この曲、ちょっとは沖縄風な響きやアレンジがしてあることを期待したのだが、残念ながら、代わり映えしないオケの伴奏と、演歌にありがちなサビで演奏されるアルトサックスが四七抜き短音階を奏でる「ベタな演歌」だった。それに歌詞も、とある「店」で働く女性が「あの人」を待ち続ける「色恋もの」の典型である。
 しかし、その歌詞には、曲名からして当然とはいえ、沖縄が登場するのである。沖縄遠く離れて逢えない「あの人」一人を心にとどめて、せつない那覇の夜を送る女性。国際通りにある店のカウンターでほろりと涙を流すと、それがグラスに落ちるせつなさ、そして最後には、そんなつらさに耐えかねて、いっそ捨てて欲しいと未練たっぷりに独白する。そんな色恋が沖縄の灯の中にぼんやり映るような「ド演歌」の歌詞。それにしても演歌に那覇、国際通り、沖縄が登場したのは、これが最初じゃないだろうか?とにかく、演歌に沖縄が登場したことで、なんだか沖縄も日本の演歌における市民権を獲得したような気がするのであった。しかし、その後、再び、演歌の中に沖縄が登場したかどうかは定かではない。
 ところでこのジャケットだが、ぴんからトリオの前にグラスを持ってすわる背広男の2名はいったい誰なんだろうか?ある知人は、「キャバレーまわりをしているぴんからトリオと、そこで飲んでいるおやじの記念写真じゃない?」と言って私を笑わせたが、それにしても不可解なジャケットである。
 赤いスーツを着て一番左に並んだ宮史郎が亡くなったのは2年前の2012年。今はもう兄弟3名はすべてこの世にはいない。