幻惑の事故調査報告。 dazzle of traffic accident report

　(1)０９年８月の交通事故から２年近く、その間、事故責任として徹底した「トヨタたたき」
で米国内でのトヨタ販売戦略にダメージを与え続けてきた、急加速トラブルの原因としてい
たトヨタ車の電子制御システムの不具合欠陥について、米運輸省はNASAとの共同調査
の結果として「電子系統に問題はなかった。運転者がブレーキとアクセルを踏み間違えた
可能性がある。」と発表した。

　結果として、訴訟優先主義で合理至上主義の米国社会が原因の追求、確証もないまま、
推定事実でトヨタ車の技術欠陥を既定事実化して、基幹産業の米国自動車業界の擁護の
ために政府、メディア一体となった余裕のない「トヨタたたき」のシナリオだった。
　トヨタの初期対応のまずさも手伝っての、本来米国訴訟社会ならではの「推定無罪」の段
階でのトヨタ排斥だ。

　(2)当初の２００件以上もトヨタ車での急加速トラブルによる死亡も含む交通事故が起きて、
通常では運転操作上のミスとは考えにくい確率の高い事故であった。
　結果的に、米運輸省の言うトヨタ車に問題はなかったことと、この２００件以上の運転トラ
ブル報告との因果関係については論理的、合理的な解説にはなっていない。

　２００件以上の運転トラブルは、ユーザーが現在集団訴訟中で裁判により明らかにされる
ことになるが、米運輸省が運転操作上のミス（ブレーキとアクセルの踏み間違い）の可能性
を言及していることからも、当初の相次ぐ運転トラブル報告には、運転上のミスの確率の度
合いに反比例する高さだけに、今となっては不思議な疑問がふくらむばかりだ。

　(3)トヨタは、問題が長引くことによる企業イメージへの悪影響を考慮して、リコール対応と
すでにいくつかの制裁に対しては原因の信ぴょう性とは別に自ら高額負担の和解に乗り出
して賠償に応じており、この段階での米運輸省の「トヨタ車に問題はない」も米国内での３年
連続減少の販売の原状回復には関係もなく、今後の販売戦略にどう優位性として影響を及
ぼすのかの未知数効果になる。

　(4)事が死亡につながる重大事故で、安全優先の自動車産業として効率化追求の矢先で
の安全神話へのアンチテーゼ（anti these）であっただけに、そもそも対応で反論の余地も少
なかったが、これ幸いにとの米国社会からのトヨタ排斥の既定事実化イズムであったのでは
ないのかの疑問は残る。

　(5)米国は、世界同時不況の発信国であり、いまだに失業率１０％前後で国内経済の回復
も鈍く、国内外からの覇権国家としての信頼も揺らいでいる。
　米国政府は、エジプト政情不安でも当初のムバラク政権支持から、早期退陣へ、さらに与
野党対話を見守るへと一貫性を欠いて軟化し変化し続けており、かってのような自信は見当
たらない。
　トヨタリコール問題でも、いまだ証拠不在の中で一気呵成にトヨタ排斥に走った思惑が見て
取れる、形勢がついた後での今回の「トヨタ車に問題はない。」発言だった。