いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

東芝の企業風土。 corporate climate of toshiba

2015-07-21 19:57:58 | 日記
 (1)08年にノーベル物理学賞を授賞した南部陽一郎さんが94才の生涯を終えた。「対称性の自発的破れ」と呼ばれる素粒子物理学の理論研究者だ。
 「とてつもないことを考え出すのが好き」(授賞記者会見)と語り、「独創的な着想を基に自然界の真理を追究する研究人生」(報道)だったといわれている。

 日本の家電、パソコン、半導体事業は、韓国、中国などの新興国企業の商品開発躍進に日本を除外した相互貿易自由化、関税撤廃による低コスト競争の中で一様に苦戦を強いられている。

 (2)かっては日本の家電企業の開発した規準、規格が米国企業との競争のなかで世界スタンダード(standard)として認められて世界の中心軸にいたものが、今では米国ではアップル、グーグルなどの「独創的な着想」のインターネットアイディア商品開発で世界に君臨して、また低コスト戦略のアジア新興国企業に太刀打ちできずに、日本の家電事業は完全に世界においてきぼりを喰わされた。

 (3)その代表のような東芝が組織的に売り上げを水増しして、長年にわたって不適正会計処理をくり返して今年になってその実体があきらかとなって、6月の株主総会で会計決算を締めることができずに配当もなく先送りして、第3者委員会を設置して事実究明をすることになった。

 その第3者委員会の調査結果が昨日報告された。直接的原因として経営トップ(歴代社長)が意図的に利益かさ上げ、不適正会計処理を指示し、周囲の是正意向にも難色を示してきた「上司の意向に逆らうことができない企業風土が存在していた」(調査報告)と厳しく指摘している。

 (4)どこの企業でも「上司の意向」というのは特別な意味を持つもの(健全な企業目的の集約、集積)ではあるが、東芝の場合は周囲の「忠告」にも耳を貸さない経営トップの独断専決が企業風土(corporate climate)としてあったと調査報告は指摘している。

 アップル、グーグルなどもカリスマ経営者(charisma proprietor)の強い指導力、判断能力、先見性が時代をきり開き、商品開発をリードしてきた革命的企業風土はあったが、東芝の場合は古い日本的大家店子(おおや・たなこ)経営体質がそのまま企業風土として残っていたということだ。

 (5)家電、パソコン、半導体事業という構造不況企業体質を抱えて、唯一原発事業を将来展開事業としていたがそれも福島第一原発事故による政府の原発政策の停止、見直しのなかで完全に行き場を失って危機感を募らせて、企業として「思考停止」に陥ったと考えられる。

 「独創的な着想」、開発を持ってあたらしい事業展開が求められていたのに、歴代社長は「東芝」ブランド(brand)を守るためだけに不適正会計処理を続けて一時的な粉飾に身を焦がす古い企業体質に閉じこもった結果の自業自得の末路であった。

 (6)かっての東芝は土光さんに代表されるように経営トップの真摯な経営信念が日本経済をリードしていたが、あたらしい時代の変化に対応できずに自滅した。

 かっての東芝EMI音楽事業は若いディレクターが今まで日本にないあたらしい音楽の発見を夢見て、いち早く財津和夫、チューリップ音楽を世に問うという先見性をみせたこともあった。現代のアップルのようだった。

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