サブカルチャーマシンガン

自分だけの「好き」を貫く為のブログ。

HURT/syrup16g

2014-09-13 | アルバム感想









私は高校のとき友達が全くいなくて教室の隅でずっとシロップの曲を聴きながら過ごしてたような人間です
登下校のときも坂道を登るときに響いてたのはシロップの「生きたいよ」だったりもしました
そもそもが中学生の時にNHK-FMのラジオで初めて知って、
そこから今まで要所要所で助けてもらって来ているバンドなだけに新譜を聴くのも再結成に立ち会うのも物凄く緊張する訳です
だから買ってからすぐ聴く、という選択肢は真面目に取れませんでした

いや、その前にシロップの「完結」を見届けた人間としては既に終わったはずの物語がもう一度動いてるような・・・
奇妙というか複雑な気持ちになってたのは隠しようもない事実です
だから正直大手を振って喜ぶ事は当時は出来なかった

しかし、五十嵐隆という人間がこの先どう足掻いてもがいていくのか
それに関しては物凄く興味がありますし、そんな五十嵐隆を観てみたい気持ちの方が強いと言えば強かったのでした
そして今作を聴くと「これしか有り得なかったんだな」としみじみと思えるようなアルバムに仕上がっていて個人的に腑に落ちてしまったんですよね。






「何も知らなかった頃が幸せだった」なんて
うそぶくのが精一杯だ 後ろ暗い防空壕  (Share the light)


価値残れない 現実の先に
衰弱していく 精神の果てに
夢を見ていた    (イカれたHOLIDAYS)


何でもないことが出来ない
当たり前のことが出来ないんだよ   (ゆびきりをしたのは)


一人きりでいるのが長すぎて
急に話しかけられると声出ないよね   (生きているよりマシさ)


「泣いてる?」なんてからかわれても
「意味が分からない。馬鹿じゃん」
くらいしか言い返せないけど   (理想的なスピードで)




上記の詞を読んで欲しい
どう考えてもこの数年間で充実してたり新しいビジョンに向かえてる人間の歌詞ではなく
むしろここ数年間の(であろう)日常の満身創痍っぷりを一気に吐き出すような歌詞になっていて
ある意味リスタート感の全くない痛みや切なさを思いっきり渦にして描いたような重たいアルバムになっています
しかしだからこそ色々説得力があるというか、成るべくして成った道なのがよく分かり得るような作品に仕上がっていて
往年のシロップファンは勿論劣等感や日々の燻りに苛まれている人間が聴けばすぐに沁み入るようなアルバムにもなっているかな、と
本当にボロボロの心境を丁寧に切り取った曲が多いのでその圧倒的な負のオーラに触れているだけでも癒される新作になっています
特にテーマ性等を感じずここ数年の五十嵐隆の心境・心情だけを最高のリズム隊でもって豪華に表現されたような
ある種のドキュメント的アルバムにもなっているかもしれません

正直かなりグッとくる曲がいくつかあったし、その他の曲も一定のクオリティを保っているので
一つのアルバムとしては傑作と言っても差し支えないんじゃないか、と個人的には感じています
多分このアルバムは人間そのものがそのまんまアルバムになっちゃったように思えますね


シロップは鬱、ネガティブ等の言葉で括られる事の多いバンドですけど
でもよくよく考えてみりゃ日常生活でいつだって「頑張ります!」なんて気分で居る人間のが少ないと思うし
シロップの歌詞のようなことを考えたり思ったりするのって実は物凄く普遍的なことだと私は思うんですね
そもそも鬱やネガティブ自体誰もがある程度抱いてるものなんだから本当に思ってる事、感じてる事をストレートに出してくれてる印象で
だからこそ、聴いてる人にとってそれがある種「普遍的」だからこそ望まれてるしヒットチャートにも食い込むんだと思います
みんな「こう思いたい」って歌ってる中でシロップは「こう思う」って人間の素直な感情を出してるだけなんですね
でもそれがみんな出来ないからこそシロップはこれだけ崇拝されてるし拠り所にするんだと思います
そういう事をこのアルバムを聴いてて、
特に「生きているよりマシさ」を聴いて個人的に深く感じました
正直、死んでいるほうがマシさ 生きているよりマシさって歌詞に近い感情を私も普通に抱きますから
真に、本当の意味で普遍的なことをごまかさずに繕わずに身を粉にして歌ってくれるシロップの有り難さが身に沁みるようなアルバムにもなったと思います
五十嵐隆が曲を書いてそれをあの二人がサポートすればまず間違いはないだろう~って思ってましたけど
本当にその通りの、ファンならきっと気に入るような作品に仕上がってると思います

一曲一曲が粒ぞろい、っていうよりは割と流れでしっかりと聴くタイプのアルバムになってるので
ことキャッチー要素に関して言えばそこまで濃いわけではありませんが、それでも決して比べて軽視してはいけないクオリティですね
何度も繰り返し聴いてると沁みる曲があったり最初から派手だなー、と思う曲もあったりユニークですし面白いアルバムかと
満身創痍の姿を晒している印象の作品ではありますがその分じたばた足掻くエネルギーも存分に感じられると思います。


更にこのアルバムで好きなのは最後の方の曲が少し明るめになってる事ですね
それらの曲(宇宙遊泳、旅立ちの歌)がなければただ単にこの数年間のドキュメントになっていたでしょうが
この2曲でもって終わる事によって凄く作品として成立している感触を個人的に受けるんですね
散々、何も無い、満身創痍、でも、だからこそ―
という感じで
きっちり作品に意志だったり意図を込めて終わっている気がして。
私的に「旅立ちの歌」がお蔵入りにならなくて本当に良かったなあ、と思いますし
それまでの辛さや痛みがあったからこそ「宇宙遊泳」の希望にも溢れたアンサンブルと歌が切なくも響くんだと思います
そういうバランスだったりドキュメント的な側面であったり、
最後に最低限の前向きさを入れる事によって「これから」を示唆している塩梅だったり
様々な面を含めて考慮して最終的には「好きなアルバムです。」と改めて太鼓判を押したいと思います
始まる前は色々複雑でもあったけども
これを聴いたらその足掻く姿をこれからも勇気に換えさせてもらうよ。と
素直に言いたくなったのも事実と言えば事実ですね。

また、ライブで聴いたら気持ちが盛り上がりそうな曲(Share the light、Stop Brain、宇宙遊泳等)があるので
今回のリリースツアーに参加するのもとっても楽しみですし聴いてる内に新曲を直に触れたくもなって来ました
ドキュメント的側面で聴き手に癒しを与えつつ、その先もきちんと提示した素晴らしいリスタート作だったと
結局はそういう風に純粋に思えました。あくまで「個人的な」感想ですが。

「HURT」、支持します。











君と居られたのが嬉しい
間違いだったけど嬉しい
会えないのはちょっと寂しい
誰かの君になっててもいい 嬉しい  (生きているよりマシさ)



今作で特に好きなフレーズです。
「Stop Brain」の「思考停止が唯一の希望」ってフレーズも大好きですが!