瞳に映っても
みんなには多分わからない
だけど構うことないさ
宝物 きみの (きれいな海へ)
個人的な感じ方ではあるんですけど、
今は“大共有時代”に突入しちゃってる節があると思います
みんなで同じようなスタイルをして、同じような感性を共有し合って
誰も彼もが馴れ合いに興じ・・・って書くと若干大げさかもしれないですけど(笑
でも少なくとも個が尊重されるような時代ではないのはバカでも分かります
たまにそんな空気が苦しくて「嫌だなあ」って感じてしまうんですが
今作「Elegance」には、
そんな空気から解き放たれて自由に、気楽になれるような作中観が多くひしめいているんですよね
気が付けば“同意”を無暗に求める現代、マジョリティでマイノリティを押し潰そうとする同調圧力、
誰かと徒党を組まないと自分の心ひとつ保てない人々を横目に
ただただ個人個人で楽しく、気持ち良く、人生を謳歌していく~
そんな風に思える楽曲が中心に添えられていて自分自身ライブで生で聴いた時から胸に来る楽曲ばかりだった、というのが本音ですね。
笑顔を見せて
誰のためでもない
笑顔を見せてよ (エメラルド)
ただ素直に生きていくだけさ (同上)
人の心はか弱いですから、
時折「他人の為の自分」或いは
「他人にどう思われるかを考慮した上での自分」になってしまう時もあります
でも、今作「Elegance」では別に誰の存在にも構う必要なんてなくて
自分の気持ちは自分だけのもので
共有だとか、
同調だとか、
そんなものをご丁寧に大切に扱い続けるのではなく
ただ自分の好きなものに、素敵だと思えるものに、愛してやまないものに真っ直ぐになればいい
ただ、思うがままに素直に生きて行きたい。っていう“個”に対する尊重が感じられてすっごく嬉しい気分になりますし
聴いてて涙が出そうになるんですよね 人間は所詮「こういうスタイルで行こう。」って自分で決めても
他人の不意の一言で「あらっ?」と、いとも簡単にブレて揺さぶられてしまう生き物だと思います
そんな時に、自分の精神を支えてくれる、後押ししてくれる、
そんな指標に成り得るようなアルバムが今作「Elegance」っていうのが俺個人の見解です
間違いが持ちきれないから
今日も誰かを許せないまま
独りで目を赤くしてる (心一つ持ちきれないまま)
一番パッと聴いて「いいな。」って思えるのはリードトラックの「きれいな海へ」ですが
この曲は歌詞の流れも物語性も(聴いてて)感動しますしノベンバ至上最ポップかつ最も誠実なラブ・ソングとして響いている名曲だと思います
逆に言えばそれ以外の曲はそこまでキャッチーではなく何回か聴き込んで良さが分かる曲が多いですね
でも、ノベンバのアルバムって激キャッチー!的なものがそもそも少ないので
じっくり聴き込んで段々好きになっていく~というのは常套と言えば常套って気はする
ひたすらに美しい作中観が心地良い「クララ」は初めて聴いた時は静かな曲だな~って印象でしたが
何度も聴き込むと囁くように愛情を込めているかのように歌われるボーカルに段々と陶酔してしまう
ここ最近のノベンバの“美しさへのこだわり”が結実したかのような一曲 素晴らしいです。
タイトルで激しい曲じゃないか、と勝手に思ってた「心一つ持ちきれないまま」は
意外にも壮大なバラッド でも流石の美メロで聴かせてくれる秀作
物悲しい作中観にもまた惹かれる一曲ですね
シンプルだがきちんと耳に身体に来るリフもまた格好良い
そしてサビで「Don't let me down(がっかりさせないで)」と繰り返す「裸のミンク」は地味なようでいて
様々な意味合いに捉える事が出来る、穏やかなメロディなのに挑発的かつ切実でもある奥深く面白い一曲に仕上がってると思います
今この社会情勢の中で聴くのにも適している楽曲だと思います。
そして「きれいな海へ」の次にポップでキャッチーかな、って思う「エメラルド」
この曲はかなりの名曲ですね・・・大人になって、色々知ってしまって、嫌になって、見たくもないものを見て
そんな複雑な心境には処方箋のような曲というか、、、ただ純粋に、ただ単純に、自分の好きなものを
素直に好きだと思えるようなことを・・・選んで笑っていたい。そう強く思える楽曲で
こういう曲とこういうメッセージこそ届くといいのになあ。って
個人的には強く強く思えるような楽曲ですね
全体的に、これまでのノベンバの作品と比べるととても「素朴」なアルバムです
でも、そんな「素朴」の中にもギラギラとした想いや姿勢がたっぷりと詰まっている、
きちんと自分らしく、好きなものを好きなように選んでいく気高さが宿っている
そんな「素敵」にも満ちているアルバムだと個人的には思いました
とっても優しい感触のアルバムでもあるんで、
新境地的な作品ではありますが、オルタナティブ・ロックが好きならこの作品から入るのも全然アリなんじゃないか・・・と。
「GIFT」ってアルバム(個人的に最高傑作だと思ってる)と似てるっちゃあ似てるんですけど
多分あれよりもポップさが薄れた代わりにナチュラルさが勝ってる感じです
まあ、要するに「どっちもイイ」って事なんですけど(笑
毛布のような作品ですが、
意志のある作品でもあると思います
心地良さの中にギラギラが内包されている傑作ニューアルバム、是非聴いて何かを感じて欲しい。と願っています。
この美しさ、気高さ、そしてじっくり聴き込む事によってじんわりと良さが伝わって来る感覚は多くの人に味わって欲しいな、と。
そして、心を保てない、
擦り切れてボロボロになってるような人に聴いて欲しい。
あなたの信じるものを、好きなものを
これからも信じ続けられるように、好きで居続けられるように。
そこにはきっと、作中の通りに“誰の為でもない笑顔”があるはずですから。儚くも尊い、傑作。
好きなものだけを
カバンいっぱいに詰め込んで
あの海へ行こう (きれいな海へ)
こういう歌詞にビビッと来るなら、きっと素晴らしく思えると思います
それにしてもこの曲のギターサウンドの流麗さは正直堪らないですね
土屋昌巳プロデュースって事もあり、
美しさを感じるフレーズ、穏やかで心地良い音色のオンパレードで
そういう点もきっと楽しめると思います
またこの曲音源向けの曲だと思いきや、意外とライブ映えする類の楽曲なんですよ
だからその意味でも11月2日から始まる新ツアーに是非足を運んで「Elegance」の世界にどっぷり浸ってもらいたい。
って事で
明日から新ツアー開幕!!
シネマとの2マンあり、ワンマンもありと10周年を締め括るツアーとしては申し分ないツアーになってます
おまけに初期のデモ音源も無料配布されるので是非お好きな方は一緒に楽しめたらな、と思います。
それぞれの感性で。
(11/15 追記)
ライブで聴いたらリアルタイムでは触れなかった「出る傷を探す血」がえらい良かったのでそのまま他の5曲と同じくらい大好きになりました
所謂ノベンバの中でもドグマやこわれるのようなハードコア系の楽曲ですが、それらの曲と比べると爆発する一歩手前で留まってるような楽曲に思えてたんですね
でも、納得が出来なくて/理解が出来なくて苛立ってる、はらわたが煮えくり返ってる、脊髄反射的に激昂してしまっている感情
それを出す事が出来なくて噴出させる事が出来なくて一人で握り拳を作ってしまう感覚が段々ツボにハマってきて
今では本当はめちゃくちゃムカついてるのにそれを出したらダメな時に寄り添ってくれる楽曲になってくれてます(自分の中で勝手にね)
この何かを/誰かを許せなくて、でもどこにも行く宛てがない憤りを抱えてる感じが「新しい」と思えて好きになれたので改めてこの部分を書きました。
本当は誰もが痛みを爆発させたいのかもしれないですね。より「Elegance」大好きになれたので是非是非残りのツアーにも。