続きです。やっと本当に本題の「イギリス大使館」です。
当時、私は建設業界紙の記者をしてました。でもここも胡散臭い会社でした。全国版での採用でしたが、一年で休刊です。そしてまた暫くしたら発刊します。その繰り返しです。その度に社員は入れ替えとなります。こんな感じが多いのです、業界紙は。
業界紙と言えども募集をかけれは1人の求人に100人は集まります。記者と言う仕事に人気があるのです。楽ですし、誰でもこんな仕事簡単に出来ますから。
私だってやっていたんです。本当に簡単です。だからこそやりたい人が多い。簡単に人が集まる。だから休刊発刊を繰り返して給料を抑えていたのかも知れんです。所詮、業界紙ってのはヤクザな商売と言えますね。全くもって。
だからこそ私、将来が大変不安になりました。私も転職を繰り返しましたから。本当にまともな会社が少ないのです。大抵がブラックと言って良いのではないでしょうか。
今では大手新聞も出版社も衰退産業と言えます。全ては貧困とインターネットによって駄目になったと言えます。私の家も新聞販売をやっていました。私も雑誌・新聞の編集・記者をしてます。どう転んでも駄目だったって事です。悲しいですわね。
イギリス大使館に行ったのはイギリスの繊維企業が新素材を発表したからです。手紙で「記者発表するから来てね」と書いてあった。それで行ったのです。
記者発表と言うと会社の人が商品の特徴を語り、記者がそれをメモして記事にすると思うでしょ。違います。説明なんか聞かなくても記事に出来ます。会社はニュースリリースを用意してますので。写真付きで。
新商品発表の記事なんてニュースリリースをリライトするだけ。こんなの小学生だって出来ます。楽なモンです。
私はチョット早めにイギリス大使館に着きました。運の悪い私はアクシデントに合いやすい。アクシデントを考慮して時間に余裕を持って行動する習性が私にはあります。直ぐに緊張する私は余裕を持たなくては生きて行けない。不器用な私が身に付けた習慣です。
「それにしても早く付きすぎた。記者発表までまだ30分以上ある。文庫本でも読んでるか。あれっ、あのポットは何だ。おっ、コーヒーが入っているのか。サービスが良いじゃないかイギリス大使館。それではご相伴にあずかりますかね」と思いポットに駆け寄りカップにコーヒーを注ぎます。勿論、砂糖とミルクを入れて。
そして一献。「うっ、旨い。旨過ぎる。何だこのコーヒーの旨さは。こんな旨いコーヒーは初めて。どうしてこんなに旨いのか。何か肉みたいな旨さだ。これは凄い」と思い、私は直ぐに飲み干し、またお替りしました。
いやいや唖然とする旨さです。これならいくらでも飲めます。もうこのコーヒーを独占したい。早く来て良かった。全部飲んでやると気合を込めまたお替り。
その頃には他社の記者が集まって来ました。私がコーヒーを飲んでいるのを見て貧乏記者がコーヒーに集まって来ました。私のコーヒーに。
私は「これは不味い。旨すぎるから不味い。直ぐ無くなってしまう。もっと飲んでやる。」と思いもう一杯。
うわぁー貧乏記者がいっぱい来た。不味い不味い、旨いけど不味い。もう一杯、もう一杯と貧乏記者の冷たい視線を横目に、身も心も貧しい私は何だかんだで6杯も飲んじゃいました。うーん満足。本当に早く来て良かった。
それにしてもイギリス大使館のコーヒーは凄い。何でこんなに旨いのだろう。豆は何なのか。どのように焙煎しているのか。入れ方はどうしているのか聞きたい。新商品の繊維なんてどうでもいい。このコーヒーの旨さの秘訣を聞きたい。
イギリスと言えば紅茶ですが、コーヒーも本当に美味しい。やっぱり伝統があるんですねぇー。お茶には拘るのでしょうね。感服仕りました。
噂によると神戸に凄まじく美味しいコーヒーを焙煎する業者が存在するらしいですが、このコーヒーはイギリスからの直通なんでしょう。そして大使館の優秀なテイスターが煎れているのでしょう。こんな美味しいコーヒーは私がどう逆立ちしても煎れるのは不可能。知りたいけど難しいでしょうね。残念です。本当に。
これ、20年以上も前の話ですが、今もってこれ以上のコーヒーを味わっていません。出来れば最後の晩餐の時、このイギリス大使館のコーヒーも是非飲みたいですね。それだけの価値あるコーヒーだと思います。イギリス大使館の職員は普通に飲んでいるのでしょうけど。
コーヒーも奥が深い。あんなコーヒーが煎れられたら、喫茶店のマスターにをやりたいですわ。絶対成功間違いなしでしょうし。あのコーヒーは一つの財産だと思いますね。
ではでは。