諸行無常なる日々。或いは鬼渡神と神々の源流。

呪われた家系を生きる私の人生観や日常。それに立ち向かう為の神道的な考え。そして因縁の鬼渡神、神々の源流について考えます。

「安達ヶ原の鬼婆=瀬織津姫」説を考察する。その3

2016年04月05日 01時05分18秒 | 瀬織津姫

続きです。

その前にご注意申し上げておきます。当たり障り無い様には書きません。徹底的に鬼婆の心境を抉って書きます。そうしないと瀬織津姫がどの様な神なのか判らないと思います。人間にとって一番罪深いのは何なのか。それを「安達ヶ原の鬼婆」は語っていますので。

それでは「安達ヶ原の鬼婆」伝説に入ります。

これはもう1200年以上も昔の話です。その女の名は岩手。伊和手とも書きます。大変美しい女性で京の都に住んでいました。

岩手は愛する夫と結ばれ娘も産まれます。そして時を同じくして京の都の公卿に娘が産まれ、岩手はその娘の乳母を命じられます。

岩手は公卿の娘に乳を与え養育するも、娘は生まれつき声が出ない。家臣からは「梔子姫(クチナシヒメ)」と陰口を叩かれます。

公卿の娘の将来を悲観した岩手は熱心に神仏に祈願するも一向に声が出る気配が無い。そして或る時、旅の者に「妊婦の肝を食せば喋れる様になれる」。更には旅の僧らしき者からは「胎児の生き胆が最も良く効く」との話を聞く。

乳母としての責任感からか藁にも縋る想いだった岩手は、妊婦や胎児の生き胆を求める事を決意し、京の都を出立。そして北に流れ流れて陸奥の国。現在の福島県二本松市の安達ヶ原の岩屋に居住するようになります。

その後岩手は岩屋だけでなく村近くに古屋を得ます。そして妊婦の旅人を見つけては世話を焼くように古屋に向かえ、妊婦を殺し妊婦と胎児の生き胆を取り出し塩漬けにして保管してました。

妊婦や胎児を殺し生き胆を抜く。これは悪魔の所業です。京の都に残して来た夫や自分の娘を思いながらも公卿の娘の為に悪鬼となって殺戮を繰り返す岩手。その所業はから岩手は段々と精神を崩壊させていきます。そして美しかった姿も老いて衰えた。若さも平常心も失っていったのです。

毎夜毎夜、望郷の念に囚われた岩手は十分な肝も手に入った事から、そろそろ京の都に帰る事を考えていました。そこに一組の旅の夫婦が現れ一夜の宿を借ります。

夫婦は大変疲れ果てた様子です。既に京の都に帰る決意をしていた岩手は夫婦を優しく迎えます。夫は疲労して声も絶え絶えになっている嫁を気遣う。その光景をみた岩手は昔の自分を見た様で微笑ましく感じながらも気が付きます。嫁が身篭っている事を。

岩手の人としての微笑みは消えて悪鬼の微笑みに変わります。そして「これを最後にしよう。そして愛する夫と娘の元に帰ろう」と最後の殺戮を心に決めます。

旅の嫁は長旅の疲労もあってか腹痛を訴えます。夫は薬を求めて村に向かい、古屋には旅の嫁と岩手の二人きりに。

岩手は「寒さが身体に障るのだろう。さぁ、もっと囲炉裏のにお寄って温まり」と嫁を囲炉裏の側に寝かせます。

身篭った腹を押さえ横たわった旅の嫁を見て、岩手は昔の自分を思い起こします。そして妬みます。「この旅の嫁は自分が失った幸せと若さ、そして美しさを持っている」と。

そう思うにつれ嫉妬の炎がメラメラと燃え上がった岩手は、懐に隠した出刃包丁を取り出し、自分の人生を振り返った積年の想いを込めて一気に嫁の胸に突き刺し、勢いよくそのまま孕んだ腹を掻っ捌く。

そして岩手は腹の赤子の肝を手づかみに取り出そうとする。その時、嫁の懐から何かが転げ落ちた。それは・・・・・・。

 

続く。

 

 

 

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